葉タバコもデコポンも…熊本豪雨で農家痛手 「先見えぬ」被害345億円

西日本新聞 一面 梅沢 平 中村 太郎 村田 直隆

 熊本県南部を襲った豪雨は、農業に深刻な打撃を与えている。県内の農作物や農業用施設、農地など農業関係の被害は345億円(27日現在)に上り、大半が南部に集中する。田植えを終えたばかりの水田は土砂に埋もれ、特産の葉タバコやかんきつ類も大きな痛手を負った。再建には費用も時間も必要で、農家は頭を抱えている。

 「5月以降に晴天が続き、今年は収量アップに期待していたのに…」

 同県あさぎり町須恵にある西野雅倫さん(55)の葉タバコ畑は、球磨川の支流が氾濫して2ヘクタールのうち約1・6ヘクタールが浸水被害を受け、出荷できなくなった。

 県たばこ耕作組合球磨事務所によると、全国一の葉タバコ産地である熊本県の昨年の売上高は58億円。そのうち、人吉・球磨地域が約30億円を占める。今回の豪雨では、栽培面積459ヘクタールのうち150ヘクタールが浸水。葉が流失したり泥水に漬かったりして、被害額は3億1千万円に上るという。

 本来なら今が収穫のピーク。しかし、泥水に漬かった葉は病気の恐れがあり出荷できない。西野さんは家族3人で葉を切り落とし、トラクターで畑を掘り返す作業を続けている。「1円にもならない泥まみれの葉を処理するのはつらい」と肩を落とす。

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 水稲の被害額は、県全体で約2億4千万円と推計される。

 八代市坂本町では、球磨川支流沿いの水田に土砂や川石が流れ込んだ。同町百済来下の坂本裕之さん(59)は、自宅周辺の水田や畑約15アールが被災。田んぼには、握りこぶし大の石が15センチほど積もっていた。

 代々受け継いできた水田は、6月初めに田植えを終えたばかり。「今年は育ちが良く、良いコメができると期待していたんだが…。どうしようもない」

 福島誠時さん(82)も水田約50アールが土砂にのまれた。「もう潮時かな…」とこぼしながらも、「水がきれいでおいしいコメがとれる地域。負けずに泥かきから始めたい」と前を向く。

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 県内有数のかんきつ産地、芦北町。同町田浦の山あいの集落では、加温ハウス4棟のうち2棟が土砂で一部押しつぶされた。

 「あとは消毒を2、3回して12月の出荷を待つだけだったのに」。近くの村田公力さん(56)は、土砂で倒れたデコポンの青い実をつかみ、力なく話した。

 収入の8割を占める贈答用デコポンの半分に加え、露地栽培の木も100本ほど被害を受けた。被害額は約400万円。土砂をかぶった木は呼吸ができず、枯れてしまう。

 再建には苗木を植え、ハウスの建て替えも必要。元通りに栽培できるまで数年はかかるという。土砂撤去の見込みも立たない中、「台風は警戒していたが、土砂に巻き込まれるとは。先が見えないのがつらい」。

 町内では農家約380戸が340ヘクタールでデコポンを栽培する。土砂崩れなどでいまだ通行不能の農道もあり、被害の全容は把握できていない。町農林水産課は「農家の意欲の低下が心配だ。栽培を続けてもらえるようサポートしていきたい」と力を込める。 (梅沢平、中村太郎、村田直隆)

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