巣ごもりの首相 コロナ対策なぜ語らない

西日本新聞 オピニオン面

 国民の理解と協力が必要だと判断すれば、自ら積極的に説明を尽くす。それが最高責任者のあるべき姿だろう。公式の場で発言することを避け、野党から「巣ごもり」と批判されるようでは、指導力に疑問符を突き付けられても仕方あるまい。

 安倍晋三首相が、記者会見や国会答弁から遠ざかって1カ月以上がたつ。この間、新型コロナウイルスを封じ込めるどころか、感染者は拡大している。今の政策と態勢で本当に大丈夫か-。国民の不安と戸惑いはむしろ強まってきたと言えよう。

 その象徴が、政府の観光支援事業「Go To トラベル」を巡る迷走である。事態収束後に実施する手はずだった事業を前倒ししたかと思えば、感染者が急増する東京都を突然除外した。「応じない」としていたキャンセル料も批判が高まると一転、補償することにした。

 このドタバタ劇一つをとっても、首相がどんな判断をしたのか。政策転換にどう関与したのか、国民には判然としない。

 記者団から問われた首相は「西村康稔経済再生担当相や菅義偉官房長官が毎日、説明している」と人ごとのように語った。それも官邸に入る際、記者の声掛けに応じたものにすぎない。一問一答形式で時間をかけて行う記者会見とは違う。

 今や首相の「肉声」はこんな一方通行でしか伝わらず、国民との対話が成立しているとは到底言い難い状況だ。

 首相の記者会見は、通常国会が閉会した翌日の6月18日を最後に開かれていない。通常国会は早々に閉じた。コロナ禍対応を理由に、会期延長を求めた野党を押し切ってしまった。

 与野党はコロナ禍対応をテーマに衆参両院で週1回の閉会中審査を開いているが、野党が首相の出席を求めても与党の反対で一度も実現していない。

 国会を閉じたばかりか、閉会中審査には出席せず、記者会見も開かないとなれば「異様な沈黙」と指摘せざるを得ない。

 共同通信社の世論調査(17~19日)によると、政府のコロナ対応を「評価する」は35%で「評価しない」が59%に及ぶ。首相が「(前回と)状況が異なり、再び今出す状況にはない」と言う「緊急事態宣言の再発令」についても「出すべきだ」が66%で「出す必要はない」の27%を大きく上回った。世論の批判や反発を恐れ、今は表に出ない方が得策だと考えているとすれば、ご都合主義も甚だしい。

 九州豪雨災害への対応、河井克行前法相夫妻の公選法違反事件、森友学園問題の再調査など国民が聞きたいことは山ほどある。記者会見を開くとともに、臨時国会も早く召集すべきだ。

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