アジアと欧州にまたがるトルコ・イスタンブール…

西日本新聞 オピニオン面

 アジアと欧州にまたがるトルコ・イスタンブール。縁あって何度か訪ねた。そのたびに足を運ぶ場所がある。世界遺産アヤソフィア。そこに立てば歴史と文明の「結び目」の真上にいると実感できるからだ

▼広大な領土を支配したローマ帝国は395年、東西に分裂。西ローマの滅亡後も、この地を都とした東のビザンツ帝国は栄え、537年、ギリシャ正教の大聖堂としてアヤソフィアが築かれた

▼見る者を圧倒する巨大なドーム天井はビザンツ建築の最高傑作だ。壁にはイエスや聖母を描いた美しいモザイク画。だが1453年、オスマン帝国が侵攻すると、大聖堂はモスクに改められた。モザイク画はしっくいで塗りつぶされ、周囲にはイスラムの尖塔(せんとう)が立ち並ぶ

▼歴史のサイコロは転がる。第1次大戦で敗れたオスマン帝国は崩壊し、トルコ共和国が誕生。近代化を目指す新国家は政教分離を国是とし、アヤソフィアは無宗教の博物館に。モザイク画も修復され、キリスト教とイスラム教の文化が共存するまれな施設となった

▼時計の針を戻すように、エルドアン大統領がアヤソフィアを再びモスクにした。イスラム化を求める保守層の支持を得るためという。東西文明の融合と和解の象徴が政治利用されるのは残念だ。欧米やユネスコからも批判の声が

▼アヤソフィアは「神の英知」の意味だ。東西の懸け橋の地にふさわしい英知を、もう一度求めたい。

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