あの映画その後

自然エネルギー新時代、政府の号令あれば一気に 河合弘之さんに聞く

西日本新聞 吉田 昭一郎

あの映画その後 震災原発事故10年目へ~「日本と再生 光と風のギガワット作戦」(4)      福島第1原発事故に関わるドキュメンタリー映画の監督たちに、事故10年目に当たって話を聞く連載「あの映画 その後」の第4部。映画「日本と再生-光と風のギガワット作戦」(2017年)で再生可能(自然)エネルギーの優位性を訴えた河合弘之監督は、新型コロナウイルス感染拡大の渦中、その思いをさらに強くしている。内外の有識者たちも新型コロナ禍からの「グリーン・リカバリー」(持続可能な経済復興)を掲げ、再生エネの導入を呼び掛けている。

「もうかるから再生エネをやる」時代へ

 後戻りすることのない再生可能エネルギーへの奔流が見えたのだろう。「日本と再生」では世界各地の先進地を取材する河合監督の高揚感が印象的だ。全編に持続可能な未来から光が差し込むような、明るさがある。

 あれから数年。日本でも機が熟してきたという確かな感覚が、河合監督にはあるようだ。

 「コロナ後へ向けて今、政府が最優先でやるべきことは『原発をやめて、自然エネルギーに行こう』『自然エネルギーで社会改革をしよう』と号令を掛けること。号令を掛けるだけで、日本でも自然エネの導入が爆発的に進むと思います。税金を使わなくても、社会は一気にそっちの方向に行きますよ」

 なぜなら、太陽光の発電設備量は世界的にこの10年で27倍の630ギガワットへ急伸し、発電コストが9割も減っている。1キロワット時2円以下で取引される例も出てきた。

 「映画の取材を始めた頃の2015年、脱炭素化へ向けて国際合意したパリ協定には『二酸化炭素を出さない自然エネルギーは環境保全に良いから』を建前に結集したところがあったと思いますが、今は太陽光の発電コストが急速に安くなって、『もうかるからやる』という時代に突入しています」「トランプ大統領が『温暖化なんてうそだ』『石油、石炭で経済を良くする』なんて言ったって、米国でも自然エネルギーが急増し、石油の中心地・テキサスでさえ太陽光発電を盛んにやっている。それは、もうかるからですよ」

 IRENA(国際再生可能エネルギー機関)など、世界の関係機関はこぞって太陽光と風力が将来、電源の主役を担うと予測する。「再生エネは安全で、楽しく、もうかる」と訴えてきた河合監督が見通した方向に、世界は向かっている。

米国カリフォルニア州のランチョセコ原発跡(サクラメント市)を訪ねた河合弘之監督(中央)と飯田哲也さん(左)ⓒKプロジェクト

 

日本経済の中枢も優位性に気づいたか

 機が熟したと思うわけはほかにもある。

 政府の経済財政諮問会議で4月、竹森俊平・慶応大教授を中心に中西宏明・経団連会長ら有識者メンバーの計4人連名で、コロナ後の復興へ向けた文書「未来への変革へ向けて-リーマン・ショック後の低成長を繰り返さないために」を提出。経済・社会のデジタル化と並び、再生エネや地産地消の分散型エネルギーなどを「持続的な成長が見込める分野」として集中投資するように提案したのだ。

 送電線への接続の増強、蓄電池への投資など具体策とともに、電力システム改革の加速も掲げた。その文書は、化石燃料や原発への投資を盛り込まず、エネルギー転換の現実を暗示するようにも読める。

 「(日本の中長期的な針路を話し合う)日本の政権中枢の会議でも、再生可能エネルギーが議論され始めた。まさに、わが意を得たり。デジタル技術を生かして自然エネルギー発電網を拡大し、新しい分散ネットワーク型社会をつくる、というビジョンは『日本と再生』で訴えたことです」

 文書を一読した河合監督は言う。

 「日本経済の中枢にある人たちも再生エネの優位性に気づいたのではないでしょうか。何しろ、年に25兆円にも上る化石燃料の輸入代金を払わずに済むわけですから。再生エネの発電コストも下がって、もはや原発や石炭に頼る必要はない、と」

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