「回復」強弁し続けた安倍政権 「戦後最長の景気拡大」幻に終わる

西日本新聞 総合面 古川 幸太郎

アベノミクス、米中対立で失速

 安倍晋三政権が誇示してきた「戦後最長の景気拡大」が幻に終わった。2012年12月からの景気拡大を巡っては、多くのエコノミストが「腰折れ」を指摘していたにもかかわらず、政府は月例経済報告で今年2月まで「回復」の景気判断を継続。その間、首相は「景気回復」を強弁して国政選挙に勝ち、歴代最長政権を築き上げた。景気判断はアベノミクスの成功をアピールしたい政権への忖度(そんたく)だったのか-。政府内からも疑いの声が上がる。

 「アベノミクス景気の『山』が判定されたことは残念だが、(月例経済報告での)政府の判断は総合的に判断しているので間違っていない」。西村康稔経済再生担当相は30日の記者会見でこう強調した。

 しかし、政府が月例経済報告での景気判断を基に「景気拡大が戦後最長になったとみられる」と表明した19年1月の時点で、景気は既に後退局面を迎えていた。30日の有識者研究会で景気の「山」と判定された18年10月は、米中貿易摩擦の激化により世界経済が減速してきた時期。エコノミストの間では「景気は既に後退している」との見方が大勢だった。

 首相は19年10月に過去に2度延期していた消費税増税に踏み切ったが、当時も景気の後退局面だった可能性が高い。その後、主要な経済指標から機械的にはじく内閣府の景気動向指数は「悪化」が続いたが、政府は失業率の低さなどを理由に月例経済報告の「回復」の表現にこだわり続け、削除したのは新型コロナウイルス感染の影響が深刻化した今年3月だった。

 内閣府の関係者は月例の景気判断について「表現はいくらでもいじることができる」「文学の世界だ」と明かす。「回復」の表現を取り下げ、アベノミクスに傷が付くのは避けたい-。実態と異なる判断が続いた背景にそんな思惑があった可能性は否定できない。

 認定された景気拡大期は71カ月と戦後2番目の長さとなったが、平均成長率は1%台にとどまり、過去の拡大局面と比べて低い。賃金の伸びが低調で個人消費も力強さを欠き、国民に好景気の実感は乏しかった。成長戦略の効果は乏しく、多くは看板倒れだ。

 新型コロナの感染拡大が追い打ちをかける中、国内外の経済には暗雲が立ちこめている。アベノミクスの停滞が鮮明となる中、日本経済が再び回復軌道に戻る道筋は見通しづらい。

(古川幸太郎)

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