コロナで注目される「ふるさと副業」 スキル生かし地域貢献

西日本新聞 くらし面 新西 ましほ

 新型コロナウイルスの影響で働き方が見直される中、副業への関心が高まっている。テレワークで時間的余裕が生まれたり、雇用の先行き不安に備えたりと理由はさまざま。注目されているのが、都市部に住みながら副業で地方に関わる「ふるさと副業」という働き方だ。働く側はスキルや経験を生かして地域貢献でき、人材不足に悩む地方の企業は打開策になると期待されている。

 7月中旬、東京のIT企業で働く男性(41)は九州にいた。コロナ禍で会社は完全にテレワークとなり、働く場所や時間は自由になった。5日間の滞在中は同僚とのウェブ会議などをこなしながら、新鮮な海の幸や地酒を味わい、温泉を満喫した。でも本当の目的は、東京に住みながら隙間時間に副業で関わる福岡、熊本、佐賀の企業を訪問することだ。

 東京出身の男性に九州との縁ができたのは4年ほど前。IT企業の出張で月2~3回足を運ぶようになって、魅力にはまった。だが出張先での仕事が完了すると訪れる機会は激減。「もっと九州に行きたい」との思いから1年半前に始めたのが副業だ。

 都市部の人材と地方企業を結ぶマッチングサイト「スキルシフト」(東京都港区)を通じ、九州の求人に応募。現在は時計店や料亭など5社でITインフラの整備やウェブでの集客対策を手掛けている。男性は「自分のスキルが頼りにされ、やりがいや成長を感じられる。経営者から学ぶことも多く、本業にもプラスになっている」と話す。

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 熊本県菊池市と熊本市で自動車学校を経営するKDSグループは、3月から副業人材を募り始めた。教習生の少ない閑散期や広い敷地などを活用した新規事業の立ち上げを考える中で「新しいアイデアを出してほしい」と求人。月額3万円の報酬で2人を採用しており、8月からは男性も加わる予定だ。

 永田佳子社長(60)は「優秀で経験豊かな人からアドバイスや最新の知見が得られて、新たなビジネスの可能性が開けた」と絶賛する。採用コストが抑えられ、地元とのしがらみがないことも魅力といい、経営者仲間の間でも評判が広がっているという。

 地方自治体でも導入が進む。福井県は昨年9月、都道府県としては初めて副業・兼業に限定した人材を公募し、421人もの応募があった。うち「故郷に恩返ししたい」などと志望した、マーケティングや広報業務にたけた首都圏の4人を「未来戦略アドバイザー」として採用した。

 仕事は県が策定中の長期ビジョンの広報戦略だ。テレワークと出勤を組み合わせて月2回程度働き、報酬は1日2万5千円。県未来戦略課の岩井渉企画主査は「県民が未来を語り合うイベントの企画、SNS(会員制交流サイト)の活用など新しい発想ばかりで、一緒に働く職員にも大きな刺激になっている」と話す。

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 リクルートキャリア(東京都千代田区)はこうした動きを「ふるさと副業」と呼び、2020年に注目すべき新しい働き方に挙げた。藤井薫・HR統括編集長は「これからは時間・空間・人間の三つの『間』の壁を超え、選んで働く時代。コロナの影響でテレワークが浸透したことで、この流れはより一層加速するだろう」と指摘する。

 内閣府が6月に公表したコロナの感染拡大に伴う生活意識や行動の変化に関する調査によると、働く人の35%がテレワークを経験し、うち46%が「職業選択、副業等の希望が変化した」と回答。通勤時間や仕事後の付き合いが減って余暇ができたり、収入が減少したりして、将来に備える向きがあるとみられる。

 働き方改革の一環で厚生労働省が2018年、副業・兼業を促進するガイドラインを策定したのを受けて、副業を認める企業が増えてきた。政府は地方創生の柱として、都市部に住みながら地方に貢献する「関係人口」の拡大を掲げており、本年度から「ふるさと副業」に旅費の支援を開始。副業先の企業を訪れる際の交通費や宿泊費の半額(一人年間50万円が上限)を、国と都道府県が企業に助成する仕組みで、福岡県などが導入している。

 藤井さんは「社会が急速に変化し、先行きを予測しづらい時代。変化に柔軟に対応するためには、個人も企業も、いかに中心点を多層化するかが鍵になる」と話している。 (新西ましほ)

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