宿泊者がコロナ…ホテルはどう動いた「初動は細かく規定を」

西日本新聞 長崎・佐世保版 前田 隆夫

 長崎市のホテルウイング・ポート長崎で4月、宿泊客の新型コロナウイルス感染が明らかになった。長崎市で1人目の感染者。県内の宿泊施設でも初めての事例だった。それから100日余り。休館、営業再開を経て、ホテル関係者が強調するのは「備え」の大切さだ。一連の経験は業種を超えた教訓になる。

 ホテルによると、4月15日午後8時すぎ、保健所から「感染者をホテルから病院に搬送する」と最初の連絡があった。従業員は保健所の指示に従い、すぐにロビー、エレベーターや自動販売機の押しボタン、ドアなどの消毒をした。

 翌朝、宿泊客を系列のホテルに移し、ウイング・ポート(200室)は休館。約20人の従業員は感染者と接触した可能性があるため自宅待機。系列ホテルの従業員が宿泊予約者への対応を代行した。

 ここまでの流れは、ほぼ想定通りだった。

 長崎市内でウイング・ポートを含む3ホテルを経営する九州教具(大村市)は、感染者が発生した場合のワークフロー(業務の流れ)を3月に作成。実際に感染者が出る直前には、熊本市の例を参考に、市中感染の状況に応じた4段階の対策もまとめていた。

 「ワークフローがあったから慌てずに行動できた。なかったら、うろたえていたかもしれない」と船橋修一社長は振り返る。

 社内にコロナ対策本部を設けたのは、横浜に寄港したクルーズ船で集団感染が起きた2月。長崎県内の感染者はまだゼロだったが、流行すれば、長崎駅前にあるウイング・ポートで発生する確率が高いと考えた。

 ホテル名の公表もすぐに踏み切った。「隠すとデマが広がる。公表した方が安心してもらえる」。船橋社長は4月16日朝、出演予定があったラジオやテレビで現状を説明。「お客さまも被害者なので、誹謗(ひぼう)中傷や過剰な詮索をしないでほしい」と呼び掛けた。

 休館中は長崎市の系列3ホテルの従業員を2班に分け、1週間交代で二つのホテルに振り分けた。感染者発生で一方の班が自宅待機になっても、業務が継続できるようにするためだ。

 7月6日、営業再開。接客は一変した。問診機能付きの自動チェックイン機の活用で従業員と宿泊客の対面接触を減らし、ビュッフェ形式だった朝食は弁当に。ウイルスを不活性化させる効果があるとされるオゾン発生装置も導入し「安心安全の見える化」を心掛ける。

 この3カ月余りの間に得た教訓は何か。九州教具経営管理本部の内村灯(あかし)さんは「準備をしていても初動や連絡態勢に甘さがあった。消防訓練のように細かく行動を決めて、誰でもこなせるような備えが必要」と語る。県内外の経済団体などの要請で、こうした体験を話す機会があるという。

 「備え」の充実は不断の見直しが欠かせない。ホテルの現場では「検証、改善で毎日が反省会」と田川豪(たけし)支配人。感染を警戒しながら模索が続く。

 (前田隆夫)

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