元徴用工訴訟、資産現金化へ一歩近づく 韓国司法が4日「公示送達」完了

西日本新聞 国際面 池田 郷

日本製品「不買」再燃も

 【ソウル池田郷】韓国最高裁が新日鉄住金(現日本製鉄)に元徴用工への賠償を命じた判決を巡り、大邱地裁浦項支部が日本製鉄側に資産差し押さえの通達書類が届いたとみなす「公示送達」の手続きが4日、完了する。日本政府が懸念する資産現金化に一歩近づくこととなり、韓国政府は日本の報復措置を警戒して身構える。8月は日本統治からの解放を祝う「光復節」や、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を延長するかどうかを判断する時期も重なり、さらなる対立の火種になりかねない。

 「新型コロナウイルスの感染拡大前は、7月の東京五輪開幕を見据え、首脳外交による関係改善もイメージしていたのだが…」。日韓外交筋は、とげとげしい両国関係の現状を嘆く。

 日韓関係は2018年10月の元徴用工訴訟最高裁判決後、極度に悪化したが、19年12月に安倍晋三首相と文在寅(ムンジェイン)大統領の首脳会談が1年3カ月ぶりに実現。関係改善の糸口を探る矢先、両政府はコロナ対策を迫られ融和ムードは霧消した。

 文政権は、日本が昨夏打ち出した半導体材料の対韓輸出規制強化を「報復措置」と受け止め、不満を募らせてきた。措置撤回期限として日本側に一方的に突きつけた5月末を過ぎると、世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを再開。対決色が一段と強まった。

 韓国司法の動きも加速している。地裁支部は6月、日本製鉄と韓国鉄鋼大手の合弁会社の株式を差し押さえる公示送達手続きを開始。手続きは2カ月後の今月4日に完了し、資産価値鑑定や資産売却命令の公示送達などの段階に進む見通し。日本製鉄に実害が生じる現金化は年末以降になるとの見方がある。

 だが韓国政府には、にわかに不安材料も浮上している。文政権の支持率急落だ。4月の総選挙直後は7割台に達した支持率は、このところ4割台前半に低下。与党有力者だったソウル市長の自殺や不動産価格高騰など内政問題に追われ、今後どんな対日姿勢を取るのかは読みにくい。

 今月15日の光復節の前後は、韓国世論の民族意識が高ぶりやすい。日本が新たに報復措置に踏み切れば、輸出規制強化を機に拡大した日本製品の不買運動が再燃しかねない。

 韓国は昨夏、対日世論の悪化を背景にGSOMIA破棄を日本に通告したが、東アジア情勢の不安定化を懸念する米国の反発を買って撤回した。文政権に近い日韓外交の専門家は「同じ轍(てつ)は踏みたくないが、日本の出方次第で破棄はあり得る」と含みを持たせる。

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