やっと10万円が届きました

西日本新聞 オピニオン面 永田 健

 7月28日、つまりこの前の火曜、郵便受けに特別定額給付金支給決定通知書が入っていた。政府の新型コロナウイルス対策「国民全員に10万円」がついに私の口座に振り込まれたのだ。

 安倍晋三政権が10万円支給の方針を決めたのが4月下旬。私の場合6月11日に支給申し込みの書類が届き2日後に記入して送った。こちらのタイムロスはほとんどなかったのに、政策決定から実際に届くまで3カ月かかったことになる。

 たしか政府は「減収世帯に30万円」と一度決めたものの、スピードを優先し「全国民に一律10万円」へ転換したのではなかったか。スピード重視で3カ月。いや、笑い事ではない。

 政府は遅れを自治体のせいにしたいだろうが「末端に届くまでが政策」である。ちなみにわが家にアベノマスクが届いたのも6月に入ってからだった。

 麻生太郎財務相にお願いがある。コロナ対応で「国民の民度のレベルが違う」とほめてくださるのはありがたいですが、その後に「政府はまるでダメだが」と付け加えてくれませんか。

   ◇    ◇

 私は5月3日付のこのコラムで「収入減ってない人の10万円」と題し、減収してない場合はどのような使い方が考えられるか整理した。(1)将来の収入減に備えて貯金(2)なじみの店で応援消費(3)手続きせず国に返上(4)受け取った上で寄付-の4パターンを紹介した。

 で、私自身はどうしたか。通知の2日後、二つのNPOに5万円ずつ郵便振替で送った。つまり選択肢(4)である。寄付先の一つは生活困窮者を支援する団体、もう一つは困窮家庭の子どもの学習支援をする団体。コロナ禍で経済的な苦境に陥る人は激増しているので、コロナ対応という支給の趣旨にもかなうと考えた。

 私はこの2団体にこれまでボーナス時など、少額ではあるが度々寄付している。なじみの店はないが「なじみの寄付先」ならある。

 選択肢(3)にしなかったのは、政府のやることがどうも信用できないからだ。私の返上した10万円が「GoToキャンペーンの巨額の委託費」などに充てられると考えれば不愉快である。

 誤解しないでほしいが、寄付はあくまで選択肢の一つであり、もちろん他人に推奨もしないし自慢もしない。選択肢(1)(2)(3)でも、それぞれの人が考えた他の選択肢でも、全て理がある。どれにするかは、各自の趣味のようなことだろう。

   ◇    ◇

 私は40年来の友人に「おまえは本当に性格が悪いからなー」と言われるような性格である。「善意の人」には程遠い。それがなぜ妙に寄付をしたがるのか。2年間住んだタイで、仏教に根差したタイ人の「寄付好き」に影響されたのだ。

 帰国してからだが、東日本大震災の時にバンコクのスラム街のある住民が、貯金全額を日本のために寄付した、という話も聞いた。日本人の感覚からすればやや計画性に欠けるような気もするが、この「善意は天下の回りもの」というような考え方が私は好きだ。

 前のコラムの印象が強かったのか、わが社の「あなたの特命取材班」に「永田さんの10万円はどうなりましたか」という「取材依頼」が来ていたらしい。もっと早くご報告したかったのですが、何しろ届いたのが先週だったので。

 (特別論説委員・永田健)

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