コロナ下の学校、「子どもファースト」視点を 教育担当4記者座談会

西日本新聞 くらし面 前田 英男 四宮 淳平 金沢 皓介 本田 彩子

 新型コロナウイルスの影響により2カ月遅れで始まった2020年度。学校現場は感染をにらみながらの難しい運営が続いている。そうした中で現状の課題も次々と浮き彫りになった。これからの学校はどうあってほしいか。7月まで教育取材に携わった教育取材班の4人が意見を交わした。

◇座談会に参加した教育取材班の4人

▽前田英男(52)=熊本総局長
 子どもは長女(大学1年)、次女(高専2年)  

▽四宮淳平(40)=編集委員
 子どもは長男(中学1年)、次男(小学5年)、三男(小学  3年)  

▽金沢皓介(37)=社会部 
 子どもは長男(小学1年)、次男(4) 

▽本田彩子(35)=くらし文化部
 子どもは長男(小学1年)、次男(4)、長女(1) 

現場の意見ないがしろ

 前田 休校は今年の3月に始まり長期間に及んだ。入試を控える最終学年の中3、高3生への影響は切実で、「9月入学制」の議論も急浮上したね。

 本田 取材した多くの子どもたちは受験、部活、学校行事と先が見えず、自宅でもんもんと過ごしていた。高3の女子は「いつ入試があるのかだけでも教えてほしい」と訴えていた。夏休みの短縮や運動会の中止が決まっても子どもたちに伝わるのは遅かった。早く知らせてほしいとの思いは共通していた。

 金沢 全国の高3生が9月入学の導入を求めインターネット上で署名活動を始める動きもあった。取材した女子高校生の「純粋に高校生活を楽しみたかった」「自分たちの学年だけ、しわ寄せを食うのはおかしい」という主張は心に響いた。しかしネット上では「荒唐無稽」と批判する声も上がり、自発的な声を一刀両断するのは疑問に思った。

 そもそも制度の不備は、いったんは乗り気になった国がフォローするべき問題で高校生に責任転嫁するのはおかしい。大学入学共通テストの民間試験導入の見送り以降、教育行政は政治に振り回され続けていると思う。特に大学入試は人生を左右する一生に一度の機会。「子どもファースト」の視点が欠けていたよね。

変わった春の風景

 前田 取材班の全員が、今春の新入生を子に持つ。

 金沢 小1の長男は学校に行くのをずっと楽しみにしていた。学校のメールシステムに登録するまでは何も情報が入ってこなかった。教科書配布や登校日も日程がいったん固まった後に急きょ中止に。配られたのは大型連休中だった。非常時だから仕方ないとはいえ、振り回されたと感じた保護者も多いと思う。

 四宮 小学校は何となく卒業し、いつの間にか中学生になった感があった。休校中、子ども自身も「今って、中学生なのかな?」って戸惑っていたよ。友人とも遊べなかった。

 本田 2カ月遅れで入学した小1の長男は理科室と図書室に入ることを一番楽しみにしていたけれど、コロナ対策でしばらく禁止されていた。休み時間に友達の席の近くに行くことも駄目だったようで、友達ができるんだろうかと心配だった。

 前田 わが家はコロナ感染拡大が止まらない東京の大学1年生。授業は始まったけど、オンライン授業ばかりで入学以来、キャンパスに入ったこともない。施設は使えず、アルバイトも友人作りもできない大学生活に、満額の授業料を払うことにはいまだに抵抗がある。学生たちによる授業料減免を訴える動きも、人ごととは思えなかった。

ICTと地域差

 前田 コロナを契機に学校、大学ではこれまで遅れがちだったオンライン授業、情報通信技術(ICT)の利用が急速に進んだけど地域差も大きい。

 四宮 「教育格差」の著書がある松岡亮二・早稲田大准教授(教育社会学)によると、家庭や地域による学力、最終学歴の差は戦後一貫して存在しているそう。コロナで「ICT環境の整備状況や創意工夫によって子どもが得られる学習機会の格差が拡大し、誰の目にも見えやすくなった」と話していた。教育では平等や公平が大切だと言われても、既に格差がある。熊本市の遠藤洋路教育長は「低い方にそろえるのではなく、いかに高い場所に合わせられるか」と言っていた。この意見には賛同したい。

 本田 私もそう思う。福岡県春日市の中学校では休校中に各学校長の判断でオンライン授業が始まっていて、市教育委員会はそれをサポートする役割を担っていた。「市教委がマニュアル作りからやっていたら、下手すれば1年かかる」という担当者の言葉には説得力があった。スピード重視で、教育委員会としての役割を果たしているなと。

 金沢 画一的な環境で同じ内容を均等に指導する日本の教育システムが限界に来ているよ。インターネットの普及や会員制交流サイト(SNS)の発達で、保護者や子どもが自分たちが住む自治体の学校の状況を他地域と比較しやすくなった。進んでいれば評価されるし、遅れていれば批判される。閉鎖的な空間での指導にとどまっていた先生たちや教委は、外部からの批判的な視線を意識する必要があるんじゃないかな。

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