1984年発表の書「戦争は女の顔をしていない」が今年、コミック版として発売され話題を呼んだ…

西日本新聞 オピニオン面

 1984年発表の書「戦争は女の顔をしていない」が今年、コミック版として発売され話題を呼んだ。ナチス・ドイツ軍と戦った旧ソ連の女性たちの証言録である

▼女性といっても多くは未成年の少女たち。「戦争中に身長が10センチほど伸びた」「願いは一つ、誕生日まで生き延びて18歳になりたい」。ある者は「一番怖かったのは男物のパンツを履いていること」と明かした

▼炊事や洗濯係ではなく誰もが前線勤務を志願した。スミレを銃に結んで上官に「花摘み娘ではない」と叱られた少女たちが、一人前の兵に育っていく。「負傷者に泣いたり同情してはいけない、自分が消耗してしまう」。人としての感情を失って

▼ドイツ国内に入った時の驚きも生々しい。立派な道路。大きな農家には高価な食器。電気洗濯機も初めて見た。「こんなに良い生活をしている」のになぜ戦争を起こしたのか

▼終戦後も、女性には別の戦いが続く。祖国を守る一心での志願だったのに、「まともな女は戦争なんか行かない」との陰口。扶助に必要な従軍手帳を隠し、戦傷の記録を捨てて過去を消す。ある女性の夫はこんな言葉を残して別の女性に走った。「彼女は香水の匂い、君は軍靴と巻き布の臭い」

▼この国は75年前に北方領土や旧満州に侵攻し、日本人に深い傷を負わせた。同時に、対独戦で2千万人もの犠牲を払った被害者でもあった。今年も8月。戦争の愚を思う。

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