「森友」国賠訴訟 真相覆う闇晴らす審理を

西日本新聞 オピニオン面

 この訴訟がなぜ提起されたのか。原告をはじめ多くの国民がどうして再調査を求めているのか。理由は歴然としている。真相が闇に覆われ、納得できない思いが横たわっているからだ。

 森友学園への国有地売却に絡んだ公文書改ざん問題を巡る国家賠償請求訴訟の審理が先日、大阪地裁で始まった。原告は財務省近畿財務局で問題に関わり自殺した赤木俊夫さんの妻雅子さんだ。裁判所は人命が失われた重大性を踏まえ、事実関係を詳しく解明した上で結論を出す丁寧な審理を進めてほしい。

 赤木さんは2017年2~3月、売却の決裁文書から安倍昭恵首相夫人や政治家らの関与を示す箇所などを修正するよう指示された。抵抗したものの不正を強制されたことで心理的負担が蓄積し、うつ病を発症して18年3月に自死に追い詰められた-と雅子さんは主張している。国と改ざん当時、財務省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官を相手取り今年3月提訴した。

 留意すべきは、雅子さんが単に国の賠償責任を問うのではなく「夫が自ら命を絶った原因と経緯を明らかにしてほしい」と強く訴えていることだ。森友問題の発覚後、安倍晋三首相は国会で「私や妻が関係していたら首相も国会議員も辞める」と答弁した。改ざんはこの発言後に行われており、政治的な意図や影響があった疑念がくすぶる。

 しかし、財務省の調査報告書では、誰がどんな目的、経緯で不正を指示したのか、詳細がはっきりせず、赤木さんの自殺にも触れていない。政府は赤木さんの死を公務災害に認定しながら、詳しい理由を開示していない。雅子さんはそれを不当と訴える裁判も起こしている。

 今回の訴訟で、国側は請求棄却を求める一方、改ざんが強制された事実は争わない姿勢を示している。仮に、そうすることで争点をうつ病と自殺の因果関係などに絞り込み、一連の経緯が法廷で暴かれることを避ける狙いがあるとすれば、不誠実と言わざるを得ない。

 共同通信の直近の世論調査で森友問題について再調査が必要と考える人は8割余に達した。この民意も直視すれば、政府に逃げ道はないはずだ。

 雅子さんは第1回の審理で意見陳述に立ち、こう訴えた。

 「できるだけたくさんの資料を集め、できるだけたくさんの人の証人尋問を行って事実を明らかにしてください。そして公正な判決を下してください」

 裁判所は、この言葉を正面から受け止め、審理を尽くすべきだ。政府が再調査を拒む中で、司法がそれを追認したり、忖度(そんたく)したりするようなことが決してあってはならない。

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