近づく大統領選 劣勢覆すサプライズ「次の手は?」

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 米大統領選投開票まで100日を切り、テレビ画面に「あと○日」と表示する報道番組が出始めた。人種差別に対する抗議活動が今も散発的に発生するホワイトハウス周辺には、投票を呼び掛けるメッセージも掲げられ「選挙近し」を感じさせる。

 各種世論調査では野党民主党候補となるバイデン前副大統領がリード。新型コロナ禍に加え人種問題が重くのしかかるトランプ大統領は「どん底」の状態にあるように映る。ところが、民主党支持者に話を聞くと、大半はこんな警戒の声が返ってくる。「トランプのことだから再選のためにあらゆる手を使ってくる」

 トランプ氏が選挙の延期を示唆したのは、その一例だろう。そもそも大統領に日程変更の権限はなく、無理筋なのだが、トランプ氏がツイッターで発信すると、同じ日に発表された4~6月期の国内総生産(GDP)速報値が「史上最悪」とのニュースは、すっかりかすんでしまった。

 しかもツイートはGDP発表の15分後。政権に不利なニュースが流れれば、唐突な発信で国民の関心をそらそうとするトランプ氏の常とう手段が今回も奏功した格好だ。

 起死回生策として「ペンス副大統領交代論」もささやかれる。バイデン氏が副大統領候補に女性を指名すると明言して注目される中、政権のコロナ対策チームを率いるペンス氏に対応の不備の責任を取らせ、女性を据えて対抗するといった観測が消えない。

    ☆   ☆

 先日、与党共和党の地方支部を訪ねると、平日の昼間でもトランプ氏の支持者が頻繁に出入りし「熱気は前回選挙以上だ」と自信ありげの様子。対照的に、バイデン氏の選挙活動を手伝うという40代の女性会社員は「世論調査に浮かれていられないが、コロナの影響で活動できないかも」と不安を隠さなかった。

 バイデン氏がコロナ感染防止を名目に、自宅外での選挙活動を極力避ける戦略は「ステルス作戦」と呼ばれ、有権者の目を自分でなくトランプ氏の言動に向けさせている。今はうまくいっているとはいえ、候補者討論会などトランプ氏との直接対決の日は遠からず来る。トランプ氏の“口撃”に耐えられるのかという支持者の懸念も根強い。

 選挙延期論は、トランプ氏が「郵便投票は不正」と言いはやすことで有権者を不信がらせ、投票をあきらめさせようとする戦術か、それとも仮に負けた場合、選挙の正当性に疑問を呈することで、次回選挙への再挑戦を含めて影響力維持を図る伏線か、真意は分からない。ただ、いずれにしても劣勢を覆すための「サプライズ」は続くのだろう。「次はどんな手で…」と想像すると何とも落ち着かない。 (ワシントン田中伸幸)

 =随時掲載

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