7月豪雨1ヵ月 九州一丸で復興へ一歩を

西日本新聞 オピニオン面

 長い梅雨が明けると同時に各地を襲った猛暑、新型コロナウイルス感染再燃と近づく台風への警戒-。2020(令和2)年の夏は、私たちに負の記憶を刻もうとしている。

 九州をはじめ中部、東北地方などを襲った記録的豪雨で、最初の大雨特別警報が熊本、鹿児島両県に出されて、きょうで1カ月となった。気象庁が「令和2年7月豪雨」と名付けた大雨による水害は、日本列島に大きな傷痕を残し、改めて多くの教訓を突き付けている。

■コロナ対策で課題も

 いまだ消息不明の人たちの捜索も続き、被災者の疲労は日々色濃くなっている。官民一体で救護に全力を挙げ、復旧・復興への第一歩につなげたい。

 特に被害が甚大だった熊本県南部を歩くと、日中は肌を刺すような暑さが続いている。

 氾濫した球磨川沿いに張り付いたように見える人吉市の中心街は汚泥の跡が生々しい。温泉宿や川下りの船着き場も例外ではない。一角に設けられた災害廃棄物置き場では、防じんマスクを着けたボランティアらが飛沫(ひまつ)を飛ばさないように黙々と作業に取り組んでいる。

 球磨川をまたぐ鉄橋は、流木が線路を幅いっぱいにふさいだままだ。豪雨で不通となったJR肥薩線である。

 総務省消防庁によると今回の一連の豪雨で、浸水以上の住宅被害は全国34府県で計1万7800棟余に上る(3日現在)。うち熊本県は約8800棟(全半壊約580棟)、福岡県は約5千棟(同7棟)を数えた。死者は九州だけで70人を超す。

 コロナ禍に絡んで思わぬ事態も起きた。熊本県内の避難所で被災者に接した県外からの保健師がウイルスに感染していた。

 避難所での「密」状態を防ぐための方策は、パーティションの導入などが繰り返し呼び掛けられ、実現されてきた。ところが結果として、実際に被災者をケアする立場の人々への配慮が足りなかったと言えるだろう。

■行政の蓄積を生かせ

 被災地には災害派遣医療チーム(DMAT)や警察、消防、自衛隊、ボランティア、報道陣など多くの人が入っている。事前の検温など、それぞれの立場で可能な予防策を徹底したい。

 被害は農林、商工、観光業など多方面に及び、過去に例がないほど広域化もしている。コロナ禍のため県外ボランティアが入れないこともあり、支援のマンパワー不足が深刻だ。

 熊本県の被災地を7月中旬に視察した安倍晋三首相は「できることはすべてやる」と述べ、政府として4千億円超の予算を活用した対策パッケージを講じた。県は、住宅全壊世帯などに支援金を支給する被災者生活再建支援法を全域に適用した。

 阪神大震災(1995年)以降続発する自然災害で、行政には復旧や被災者ケアについて相当な知見が蓄積されている。それらをフル活用し、民間の力を取り入れる工夫も欠かせない。

 今回の豪雨は、積乱雲が次々発生し列をなす「線状降水帯」がもたらしたとみられる。九州豪雨(2017年)、西日本豪雨(18年)よりも積乱雲が大量かつ繰り返し発生した可能性がある。その源は海面水温の上昇で大量に発生する水蒸気だ。

 地球温暖化の影響で日本近海の水温も上がっていたとみられる。水蒸気は台風のエネルギー源でもある。警戒を怠れない。

 今回の被災地の復旧・復興は5~10年単位の長期戦となる。熊本県は熊本地震から4年がたち、復興のめどが立って程なく7月の豪雨に見舞われた。大きな試練である。九州が一丸となって手厚い支援をしたい。

 生活再建に向けた動きも徐々に出てきた。同県球磨村で仮設住宅への入居が始まっている。被災する前より住みやすく、災害に強い地域を目指す「創造的復興」を進めたい。

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