上野焼ろくろと格闘 力加減が大事 慣れると楽しい 福岡県福智町「庚申窯」

西日本新聞 もっと九州面 長 美咲

 新型コロナウイルスの影響もあり、できるだけ自炊をしていた。「でも少し飽きちゃったな…」。友だちにこう話すと「新しいお皿を買えば気分が変わるんじゃない」とアドバイスしてくれた。それならいっそのこと自分で作ってみよう。福岡県福智町に伝わる「上野(あがの)焼」の窯元の一つ「庚申(こうしん)窯」で陶芸体験に参加した。

 同県飯塚市の職場から車で約30分。庚申窯はのどかな景色が広がる福智山の麓にあった。出迎えてくれたのは2代目窯主の高鶴享一さん(56)。陶芸体験には手びねりと電動ろくろの2コースがあるという。初心者には手びねりの方が易しいそうだが、「サポートするのでやってみては」と背中を押され、ろくろに挑むことにした。

 高鶴さんに粘土の密度を整える「土殺し」をして土台を作ってもらい、ろくろの前に座る。右足でペダルを踏むとろくろが回り、踏み込み具合で回転速度を変えるそうだ。まずは、両手の親指で粘土の中心に穴を開ける作業。手を水でぬらし、ろくろを回転させ、恐る恐る粘土の上に親指を置くが、なかなか開かない。「手にたっぷり水をつけ、ぐっと押してみてください」。助言通りにやると、今度はするすると穴が開いた。

 穴が深くなったら左手は外側に添え、右手の指で器の内側と外側をつまみ、下から上に向かって少しずつ滑らせて成形する。この作業を繰り返して粘土を薄く伸ばしていくのだが、これが難しい。せっかちな私は、ろくろが1回転する前に右手を動かしてしまい、粘土の厚さがバラバラになり、形もゆがんでしまった。

 高鶴さんに整えてもらい再挑戦。今度は慎重になりすぎてなかなか形が変わらない。「大丈夫、大丈夫です」と励ましてもらいながら土と格闘すること十数分。何とかお茶わんの形にすることができた。

   ◇     ◇

 「せっかくなので、パスタやカレー用の中皿を作りたい」と相談すると、その工程へ。左手は外側に添え、右手で中心部から外側へと粘土を伸ばし、広げていく。皿の端は形が崩れやすいため両手で挟み、成形する。これを繰り返すと適度な厚みで広がり、理想の形になっていった。

 ろくろを止めて完成、と思っていると、高鶴さんから「縁(ふち)に一手間加えると、円形以外の仕上がりにもできますよ」。それならと、一つ目の皿は縁を少し持ち上げ、角皿風に仕上げた。慣れてくると作業がだんだん楽しくなり、1時間半で中皿4枚と二つの小鉢ができた。

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 上野焼は、千利休から茶の湯を学んだ豊前藩主細川忠興が約400年前、朝鮮の陶工尊楷(そんかい)を招き、窯を築かせたのが始まりとされる。銅の釉薬(ゆうやく)を使った、鮮やかな緑色が垂れるように流れる「緑青(ろくしょう)流し」が代表的なデザインだ。皿の色を決める釉薬を選ぶ際、中皿の1枚はこの緑青流しにしてもらった。この後は、高鶴さんが乾燥、素焼き、釉薬がけ、本焼きをやってくれ、完成すると受け取れる。

 そして1カ月後。連絡をもらい、できあがった作品と対面。緑青流しの中皿はデザインには大満足だが、思ったより小さく仕上がった印象だ。同じ形と大きさにした二つの小鉢は、粘土の量に差があったようで、持ち上げてみると重さが全く違っていた。反省点はあるが、これも手作りならではだ。

 皿を眺めていると、作りたい料理が次々と頭に浮かび、自炊意欲が復活した。まず今晩は、夏らしい爽やかな水色に仕上がった小鉢に合わせ、ナスの煮浸しを作ることにしよう-。 (長美咲)

 ▼上野焼 庚申窯 九州自動車道八幡IC(インターチェンジ)から車で約20分。公共交通機関利用の場合は、平成筑豊鉄道赤池駅からタクシーで約10分。無料の町福祉バスは約30分。営業時間は午前10時~午後5時半(不定休)。陶芸体験は要予約。参加費は税込み3000円(2個分の焼成代込み)で、3個目からは一つ500円で焼成する。問い合わせ=0947(28)2947。

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