被爆者の「声紋」聞こえるか 長崎・爆心地でアートプロジェクト

西日本新聞 華山 哲幸

 75年前に原爆が投下され、上空約500メートルでさく裂した長崎市の爆心地公園。原爆落下中心地碑から扇状に無数の白い線が振れながら地面を伝う。時に穏やかに、時に激しく揺らいで。

 白い線は被爆者の声紋だ。アートプロジェクト「声紋源場(げんば)」は、ドイツやメキシコを拠点に活動するアーティストの竹田信平さん(41)=大阪府出身=が手掛けた。竹田さんは、原爆をテーマにした映画制作に通訳として関わったことを機に、長崎や広島から北南米に移住した被爆者の証言を集めている。

 被爆者は惨劇の記憶を呼び起こすとき、声を詰まらせ感情を高ぶらせることがある。声紋はそれを表現した。「この場所で何が起きたのか、想像するきっかけになれば」。専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンを現地でかざすと、12人の肉声が聴ける。

 構想したのは3年前。「被爆者の反発があるかもしれない」との懸念もあり、何度も長崎を訪れて被爆者団体などに意図を説明し、長崎市の被爆75周年記念事業に採択された。長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(79)は「今までにない継承の方法だ」と期待を寄せる。竹田さんはこのコミュニケーションこそ今回の成果と捉える。「作品はいつか消える。被爆地とできたつながりから、また新たなものが生まれればいい」。公開は10日まで。

(華山哲幸)

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