「雑魚寝の風景」なくしたい 段ボールベッド、設営時の労力軽減も必要

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

避難所への段ボールベッド導入 (下)

 避難所から雑魚寝の風景をなくしたい-。避難所・避難生活学会(植田信策代表理事)が、そんな思いを込めて提唱する段ボールベッドの活用。改めて、その利点を踏まえ、なお残る課題をまとめた。

 同学会の理事、日本赤十字北海道看護大の根本昌宏教授(寒冷地防災学)は、胆振東部地震時などの事例に基づき、次のような長所があると指摘する。

 (1)床との間に空間ができて冷気が遮断され、温かくて低体温症対策になる。

 (2)段ボールの適度な高さや弾力によって、就寝時のストレスを減らせる。

 (3)同様の効果で寝返りや起き上がりがスムーズになり、エコノミークラス症候群対策も期待できる。

 (4)床から伝わる音が遮られるので、夜中にトイレに行く時の足音など他人への迷惑を軽くできる。

 (5)床から舞い上がるほこりの吸引を減らし、せきの軽減や感染症対策になる。

 (6)段ボールに吸湿性があり、汗や臭い対策になる。

 (7)間仕切りもセットで設置できるので、プライバシー保護のほか、新型コロナウイルス対策でも重視される飛沫(ひまつ)対策にもなる。

 (8)箱の中の空洞部が収納に使えるほか、靴箱などに流用でき衛生対策になる。

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 根本教授によれば、収納スペースをうまく利用すれば避難者の私物が片付き、通路の確保なども容易になるという。

 さらに、ベッド導入によって家族単位の生活空間が区画として確保されることで、どこで誰が暮らしているのか分かりやすくなり、保健師らによる要配慮者に対応するための巡回もスムーズになったそうだ。

 根本教授は「こうした性能や利点が備わっていれば、ベッドは段ボール製にこだわる必要はない。ただ、それに匹敵する安価な製品は他には見当たらない」と話す。

 学会理事で、段ボールベッドの考案者でもある水谷嘉浩さんは、自身が経営する会社「Jパックス」(大阪府八尾市)で改良型の製品も生み出している。

 従来品は、ミカン箱サイズの箱を組み立てるタイプだったが、粘着テープで貼り合わせたりする手間がかかっていた。数百単位で導入となれば、作業の労力は見過ごせない。

 改良型は、ワンタッチで箱の底部が閉じてテープで貼る手間も不要にする構造。「組み立て作業時間は以前の3分の1くらいに節約できる」という。工場での製造には従来品より時間がかかるが、「現場での作業負担を減らすため普及させたい」と語る。

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 3回にわたって避難所への段ボールベッド導入を巡る課題を紹介してきた。

 毎年、大きな自然災害が起こり、長期の避難生活を余儀なくされる人が多数に上る中、「非常時だから雑魚寝でも仕方ない」は、もはや通用するまい。

 水谷さんは「自治体は本気で最初から導入する意思を持ってほしい。どうしても住民は遠慮しがち。住民に希望を聞いた上で対応といった姿勢では、何も変わらない」と訴える。

 取材した中では「折りたたみ式のベッドを備蓄している。足りなければ政府のプッシュ型に頼る」という自治体もあった。もちろん折りたたみ式でもよいのだが、それを迅速に避難所に運び、適切に設営するマンパワーの確保まで事前に考えておかなければ、備えとしては不十分だろう。

 今のところ、現場のマンパワーは自衛隊が頼りのようだ。自衛隊も進んで協力しているが、一方的に「いざとなったら来てくれる」と期待してよいのか。

 少数の導入なら、住民自らが設営するやり方も考えられる。それでも、事前の清掃と消毒、適切な配置などをうまく取り仕切るリーダーが欠かせない。自治体は一定数の備蓄をし、日頃から設営体験イベントを行うなど準備が必要だろう。

 東京にある政府備蓄を遠距離輸送するやり方は、現時点では致し方ないが、全国に分散備蓄して急場をしのぎ、防災協定に基づく段ボール製造業界の対応につなげる道も検討すべきだ、と呼びかけたい。 (特別編集委員・長谷川彰)

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