球児の懸命なプレーに心打たれた 記者が見た「最後の夏」

西日本新聞 佐賀版 野村 有希

「何か」をつかんだ選手たち

 新型コロナウイルスの影響で中止になった佐賀県高校総体と全国高校野球選手権佐賀大会の代替として開かれた「SAGA2020 SSP杯 佐賀県高校スポーツ大会」は、野球競技の終了で閉会した。

 4日にあった野球の決勝。龍谷と敬徳は互いに一歩も譲らなかった。灼熱(しゃくねつ)のグラウンドで4時間以上に及ぶ試合。延長十三回裏、1点をもぎ取った龍谷の選手たちは抱き合って喜び、敗れた敬徳の投手はマウンドで泣き崩れた。

 今大会で優勝しても甲子園の舞台には立てない。どうして、彼らは全力を尽くして戦ったのか。

 5月、県はSSP杯の開催を発表した。新型コロナウイルスの影響で休校が続き、勉強の遅れを取り戻さないといけない高校生の負担になるだけでは。そう思いながら野球の担当者として取材を始めた。実際、球場での応援は限られ、降雨による試合の中止、延期が繰り返されるなど選手は例年にはない寂しさとストレスを強いられたはずだ。

 それでも前向きに、言い訳をせずに試合に全力で臨む選手を目の当たりにした。懸命なプレーに心を打たれた。「最後の舞台を用意してくれたので、しっかりやろうと思った」。優勝した龍谷の森悠人主将の言葉が、全てを言い表していた。斜に構えていた自分が恥ずかしくなった。

 大会中、試合を終えた選手に卒業後の進路を尋ねたら、こんな答えが返ってきた。「大会を通じて野球の楽しさを実感した。就職を考えていたけど、今から野球ができる大学を目指せないか、監督に相談したい」

 野球を含めてSSP杯は全日程を終えた。甲子園、インターハイなど全国の舞台にはつながらなくても、自身の人生を大きく変えるかも知れない「何か」をつかんだ選手はいた。進路を語った彼の笑顔が強く印象に残っている。

(野村有希)

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