あの日、何を報じたか1945/8/10【長崎市に新型爆弾 被害は僅少の見込み】西日本新聞の紙面から

西日本新聞 福間 慎一

 〈西部軍管区司令部発表(昭和二十年八月九日十四時四十五分)一、八月九日午前十一時頃敵大型二機は長崎市に侵入し新型爆弾らしき物を使用せり 二、詳細目下調査中なるも被害は比較的僅少なる見込み〉

 1945年8月9日の長崎市への原爆投下。一報は翌10日、1面に4段の見出しを立てて報じられた。1面トップはソ連の対日宣戦布告。新型爆弾投下の記事はその左下に配置され、「被害は僅少の見込み」との見立てが添えられたものだった。

 その軍管区司令部発表に添えられた記事の見出しは〈欺騙(ぎへん)行動で不意打 新型爆弾に厳戒を要す〉。被害の大きさをにじませているが、一方で〈長崎市の暴爆は官民の適切な措置により被害を比較的僅少にとどめた〉とのくだりもある。

 〈この新型爆弾は六日広島市に対して使用した物とほぼ同種類と判断される。敵は長崎市上空に現れるや同市上空付近を遠く迂回し、しかも高々度を以て不意打ち的な欺騙行動に出ている。(中略)世界人道の仮面に隠れた敵のあくなき残忍性を暴露したものである〉

 新型爆弾とは何なのか。恐るべき物なのかそうではないのか。読者は混乱したに違いない。上記記事のそばには〈都市疎開と洞窟化 新型爆弾の防衛可能 応急対策として注意すべき諸点 西部軍当局談〉の見出しで、初めて新型爆弾への具体的対応について触れた記事がある。

 〈威力強大ではあるが防衛は完全に可能〉として、新型爆弾の恐ろしさは「爆風」と「熱波」と紹介しているが、原爆の特性を説明する次のくだりは、事実と異なるどころが、ほぼ正反対である。

 〈爆風 近距離において木造建物などを打倒する力はあるが、防空壕の掩蓋を潰したり、堅牢建物を倒したり、地上の人の身体を破壊したり、煙突を倒したり墓石を倒したりするような威力も作用もない〉

 〈熱波 近距離において障子のような燃えやすい物体を発火させ人を火傷させるが、市街が押し倒されて瞬間大火災になるようなことはない〉

 対策についても〈極めて簡単である〉と断言し、防空壕に掩蓋を付ける▽掩蓋がない場合は小さな深めの壕を選び、布団や毛布などをかぶれば効果大-などとしている。

 長崎への投下の一報を含む原爆関連記事はまだある。中国軍管区司令部による七日発表の広島原爆への一報で、〈B29四機は広島市上空において曳光(えいこう)高性能爆弾を投下せり〉というものだった。

 誤った内容に満ちていたこの日の原爆報道。唯一、その深刻さがにじむのは小さな見出しの同盟通信電の〈法王庁機関紙非難〉という見出しの記事だ。

 〈【リスボン七日発同盟】 米機が広島市に対し新型爆弾を使用したことは全世界に異常な反響を呼んでいるが、ローマ来電によれば法王庁の機関オッセルヴァートーレ・ロマーノ紙は七日の紙上で右爆撃を戦争の終了を焦る「破滅的手段」と称してその非人道性を指摘、次の通り論じている〉

 〈かつて潜水艦を着想したレオナルド・ダヴィンチは将来これが不正な目的に使用されることを恐れ折角の計画をそのまま握りつぶしたというが、今回対日戦に使用された爆弾の発明者がダヴィンチの例に倣って新発明を葬り去らなかったことは遺憾の極みだ〉

 原爆で、西日本新聞の長崎支局も焼失した。8月9日午前、爆心地に近い長崎医科大(現長崎大医学部)方面に取材に向かった記者の松尾孝さん(25)がそのまま戻ることはなかった。(福間慎一)

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 〈〉部分は当時の記事から引用。できるだけ原文のまま掲載。

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