ソウルの不動産 3年で5割高 高官・議員の蓄財にも反発

西日本新聞 国際面 池田 郷

 【ソウル池田郷】韓国の文在寅(ムンジェイン)政権にとって目下の最大懸案は北朝鮮問題でも日韓関係でもなく、首都圏における不動産価格の高騰だ。政権発足3年でソウルのマンション価格は約5割も上昇。政府高官や与党議員が複数の住宅を保有して蓄財を図っていることも相次いで明らかになり、マイホームに手が届かない中間所得層が猛反発。5月に70%を超えた文氏の支持率は40%台に急落した。政府が打ち出す対策も弥縫(びほう)策にとどまり、価格が落ち着く兆しは見えない。

 ソウル市麻浦区の30代男性が2016年11月に8億5千万ウォン(約7600万円)で購入した新築マンションは、3年後の19年11月に16億5千万ウォンまで跳ね上がった。購入物件を担保に5億ウォンのローンを組んだが、売却して借金を完済しても3億ウォンの差益が出る。

 韓国の非政府組織(NGO)によると、5月のソウルのマンション平均売買価格は25坪(82・5平方メートル)当たり約12億9千万ウォン。文政権が発足した17年5月比で53%上昇した。首都圏への人口集中に加え、低金利に伴う「金余り」が続いており、収益性の高い不動産投資熱は高まるばかりだ。

 特に高級マンション街の江南地区では1990年代に2億ウォン台だった古いマンションでも20億ウォン近い価格で取引される。こうした物件の売却益を原資に2軒目、3軒目の物件を購入して財を成す人たちが少なくない。

 現状でマンションを買うには、最低でも販売価格の4割ほどの自己資金が必要とされる。一般的な勤労者に買えない高額物件が増えており、親から金銭支援が得られる「金のスプーン階級」か、支援が乏しい「泥のスプーン階級」かの違いがものをいう。

 30代を中心に「マイホーム格差」への不満が高まる中、与党系議員180人のうち42人と、大統領府の高官12人が複数の住宅を所有することが判明。盧英敏(ノヨンミン)大統領秘書室長は7月、秘書官級以上の高官に居住用以外の売却を勧告した。だが張本人の盧氏が選挙基盤の地方都市の物件を売る一方、資産価値が高いソウルの物件を手放さないことに、さらなる世論の怒りを招いている。

 文政権は、不動産取得税の増税や金融機関の融資制限など就任以降二十数回にわたり対策を打ち出すが、効果は出ていない。むしろ富裕層が増税を上回る将来の売却益を見込んで新たな不動産を求めることで相場がさらに上昇。中間層にとってますますマイホームが遠のくという悪循環を生んでいる。

 不動産業者は「住宅供給を増やせば価格は落ち着く」と口をそろえる。政府も4日、公共用地の開発や容積率緩和などで約26万戸を供給する目標を表明。ただ過度な都市開発を抑制する政策を掲げる文政権は、グリーンベルトと呼ばれる開発制限区域の解除に消極的で、供給目標の早期実現は難しいとの見方もある。

 ソウル一極集中を解消するため、与党で浮上している首都移転構想も実現性に疑問符が付く。盧武鉉(ノムヒョン)政権もソウルの南約120キロに位置する中部・世宗市への首都機能の一部移転を進めたが、ソウルに家族を残して単身赴任したり、長距離通勤したりする職員も目立つ。40代の女性公務員は「韓国は受験競争が激しい。ソウルと地方都市の教育格差を懸念する親は首都圏を離れたがらない」と話す。

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