うつで自殺、体売った女性…被爆者と家族の苦難 代弁する69歳の思い

西日本新聞 総合面 久 知邦

「東友会」相談員の村田未知子さん

 東京在住の被爆者らでつくる団体「東友会」で38年間、相談員を務める。東京生まれの69歳。被爆2世でもない。小学生の時、授業で見た原爆被害の写真集に衝撃を受け、戦争に関心を持つようになった。友人の夫だった被爆者に誘われ、31歳で会に入った。

 相談員になって間もない頃、電話の相手に名前を尋ね、「匿名ではだめなのか」と切られたことがある。戦後に上京し、被爆の事実を隠して差別や偏見を恐れながら生きる人たちに、思いが至らなかったと悔やむ。今も年1万5千件の相談が被爆者や2世から寄せられ、匿名も少なくない。

 1958年に結成した会は半世紀にわたり、健康不安や公的支援の手続きの相談に乗ってきた。保管する記録は約5千人分。高校教師だった男性が特に印象に残る。77年の記録には≪突然、熱が出て、顔や手がどす黒くなる。薄汚くなり人前に出るのも苦痛≫とある。「どんな思いで教壇に立ち続けたのだろうか」。2013年、80代になった男性は自ら命を絶った。後遺症と被爆者であることに苦しみ、うつ状態になっていた。

 「苦しんだのは被爆者だけではない。何の支援も受けられなかった時代、後遺症で働けない被爆者の夫のために体を売ったという女性もいた」

 被爆者の平均年齢は83歳を超えた。幼児期に原爆に遭い、記憶が曖昧で体験を語れない人も増えた。被爆者やその家族の苦難を代弁するために、5年前から相談記録を基に講演活動も続ける。「記録には苦しみながら生きてきた被爆者の人生が詰まっている。私にも語れることがある」

(久知邦)

 

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