「シベリア三重苦」生き抜くため 木彫りのマージャンパイ

西日本新聞 ふくおか版 帖地 洸平

 いまだその全貌が明らかにされていないシベリア抑留問題。5万を超える死者を出し、酷寒、飢餓、重労働の「シベリア三重苦」を真っ先に連想はしても、そこに「マージャンパイ」が存在する余地のあったことを知る人は少ないに違いない。福岡県筑前町立大刀洗平和記念館に、抑留者が手掛けたマージャンパイがある。実物を見るまでは、記者もにわかに想像がつかなかった。

 同館によると、作ったのは台湾出身の日本人、梶原康人さん(故人)。中央アジア以西の収容所を転々とした2年間の抑留生活で、拾い集めた木々で作り、ひそかに日本に持ち帰った。

 シベリア抑留の研究者、富田武・成蹊大名誉教授(日ソ関係史)が説明してくれた。「いつ帰国できるのか、生きて祖国に帰られるのかも分からない極限状況の中、わずかに生まれた自分の時間に、マージャンや将棋をして過ごすことは生活にリズムと張りを生み、生きている実感や希望を与えた」

 そんな背景を聞いたからか、パイに刻まれた文字や図柄の一つ一つに、なんとしても生き抜こうとした思いを感じた。だが、今なお2万に迫る戦没者が身元不明のまま異郷の地に眠っていることを思うと、仲間と卓を囲んだであろう状況は、容易に脳裏に浮かばなかった。 (帖地洸平)

 =随時掲載

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