「マスク」は冬の季語。代表句に高浜虚子の…

西日本新聞 オピニオン面

 「マスク」は冬の季語。代表句に高浜虚子の<マスクして我(われ)と汝(なんじ)でありしかな>。弟子の山口青邨の送別会で詠んだ。惜別か決別か。私も君もそれぞれの道を進めばいい。マスクが2人を隔てるように

▼花粉症の増加で、春先のマスクは珍しくなくなった。そしてこの夏は、せみ時雨の中に色とりどりのマスク。もちろん新型コロナのせいだ

▼感染予防にマスク着用は欠かせないが、このところ続く35度前後の酷暑の中ではつらい。長時間着けていると息苦しさでくらくらしてくる

▼暑さでぼんやりした頭に駄句が浮かんだ。<マスクして我と国民でありしかな>。献じたい相手は「アベノマスク」と呼ばれる小さめの布マスクがトレードマークとなった安倍晋三首相である

▼九州などが豪雨災害に見舞われ、被災地の支援は急務。コロナは再拡大、経済は青息吐息。政府がすべきことは山ほどある。国会を開いてしっかり論議し、国民に丁寧に説明せよ、という声に、首相は口を閉ざす。<マスクしてソーシャルな距離を国民と>

▼洗って何度でも使える、とこだわっていたのに、近頃は別のマスクも。タイミングもピントもずれたコロナ対策の象徴-とやゆされるマスクは着けたくないのが本音かも。同じく虚子の弟子、野見山ひふみの句に<純白のマスクを楯(たて)として会へり>。マスクを替えても、やっぱり盾のように、語り掛ける口元を隠したままのようだ。

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