景気判断の誤り 政治のお手盛り許されぬ

西日本新聞 オピニオン面

 第2次安倍晋三政権の発足とともに始まった景気拡大は71カ月で終わった。政府が触れ回っていた「戦後最長の景気拡大」は幻であり、事実に反することが明確になったと言える。

 拡張期から後退期への転換点である「景気の山」は2018年10月だった。経済指標の動きを基に内閣府の有識者会議が認定した。

 にもかかわらず、西村康稔経済再生担当相は「政府の景気判断は間違っていなかったと今も確信している」と記者会見で述べた。経済政策の責任者として理解に苦しむ発言だ。

 政府が毎月発表する月例経済報告は今年2月まで「景気は緩やかに回復している」という判断だった。もしもこれが正しければ、有識者会議の認定との矛盾は明らかである。結局のところ、この間の景気は回復していたのか後退だったのか、国民はどう理解すればいいのだろう。

 判断の誤りを認めたくないから詭弁(きべん)を弄(ろう)している。そう批判されても仕方があるまい。

 政府にとって都合が悪い結果は受け入れないという姿勢では困る。そんなことでは的確な情勢分析や政策決定など望むべくもない。この際、政府全体として判断の誤りを認め、今後の政策運営に生かすべきだ。

 政府が景気回復にこだわったのは、安倍政権が経済最優先を掲げてきたからだろう。経済政策アベノミクスの成果を国民にアピールするため、戦後最長の景気拡大という看板を利用しようとした節がある。

 この問題は消費税増税にも絡む。安倍首相は景気の腰折れを防ぐ名目で2度延期した消費税増税を19年10月に実施した。ところが実際の景気はとっくに失速していた。増税のタイミングが適切だったのか問われよう。

 こうした事情から、政府が景気判断を恣意(しい)的に扱ってきた疑念は残る。もともと月例経済報告は政治の都合が反映されやすいとされる。経済情勢には目をつぶり好景気を装ってきたのなら、百害あって一利なしだ。

 統計は中立であることが必要不可欠であり、恣意的だと疑われるだけでも、その価値は減じる。厚生労働省の毎月勤労統計に端を発する統計不正問題が発覚し、政府として反省したばかりではなかったのか。

 西村氏は、政府の景気判断は国内総生産(GDP)や雇用者数などより幅広い統計を基にしているとして、10の経済指標に着目する現在の景気判定ルールの見直しにも言及した。

 経済のソフト化などに伴い採用する統計や判定ルールを改めるとしても、その前提は透明性のある議論と明快な事前説明であることを肝に銘じてほしい。

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