沈黙なしのオンライン 中野慧

西日本新聞 オピニオン面 中野 慧

 インターネットを通してパソコンなどの画面越しに何かをする「オンライン○○」。この数カ月でずいぶん増えた。会議に始まり授業や面接、帰省や飲み会もある。新型コロナ禍で必要に迫られたとはいえ、便利ではある。

 本紙こども記者の取材や勉強会にも活用している。そこで気付いた。周囲の目を気にする日本人に向いているのではないか、ということだ。

 確かめようと「ワークショップ」について多数の著書がある東京工業大の中野民夫教授(63)に話を聞いた。

 ワークショップの特徴は一方的な知識や情報の伝達ではなく、参加者が主体となって体験し、共に学び合い、創り出すこと。中野さんは20年以上、まちづくりや企業、教育の場などでこの手法を実践する。そのために机や椅子の配置、グループの大きさや進行など本音で対話しやすい「場づくり」を追求してきた。

 東工大ではコミュニケーション論などを担当し、参加型の授業を進めている。「意見の異なる生身の人間と顔を合わせてこそ学びが深まり、コミュニケーション力も高まる」との考えからだ。ところが本年度は全ての授業がオンラインになった。リアル(対面)な場にこだわってきた中野さんには物足りないのでは?

 「オンラインのライブ授業はかなりいいです。可能性を感じています」。えっ、そうなの。思わず聞き返した。かなり、ですか?

 授業で使うビデオ会議アプリ「Zoom」は、リアルの場では苦労するグループ分けがクリック一つでできる。教室でも小グループに分けての授業をしてきたが、今はリアル以上に対話が弾むという。中野さんは「画面の中では参加者の顔だけが均等に表示されて、対等な関係で向き合えるからでは」と話す。

 合点がいった。だから背の高さも服装の個性も違うこども記者たちが、リアルの場では見せない積極性を発揮して自由に発言していたのだ。オンラインの欠点ともいわれる「空気の読みづらさ」。だから逆に、必要以上に周りの様子を気にしなくて済む。参加するのも自宅という気楽な場所だ。不登校の子どもがオンラインだと出席できる、という話も納得できる。

 最近、こども記者が実際に集まる機会があった。一人の子が発言を遠慮する身ぶりを見せると瞬く間に伝染した。「あれ、どうしたの?」。同じ子どもたちとは思えない。長い沈黙に焦る。一瞬、オンラインが恋しくなった。

 リアルの場であの活気をいかに再現するか。目下の課題だ。 (こどもタイムズ編集部)

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