台風シーズン 「多重災禍」から命を守れ

西日本新聞 オピニオン面

 台風シーズンが本格化してきた。先月は観測史上初めて7月として発生ゼロだったが、8月に入ってからは既に4個が発生し、今年は計6個となった。

 7月に九州などを襲った豪雨の傷痕はなお生々しく、猛暑も重なる。再燃した新型コロナウイルス感染にも警戒が必要だ。

 こうした「多重災禍」の現実へ冷静に対応し、官民一体となって乗り越えたい。市民も台風関連の情報に積極的に接し、適切な避難行動につなげたい。

 7月の台風ゼロは、太平洋高気圧が北西に張り出し、台風が発生しやすい地域をふさいだことなどが原因とみられる。

 台風の発生個数は平年で年間25・6個に上る。このうち7月は3・6個を数え、うち2・1個が日本に接近する。

 統計に従えば、7月までに発生が少ない年は警戒が必要だ。2016年は7月までに計4個だったが、8、9月に各7個が発生し、ともに半数以上が接近した。特に8月の台風10号は猛威をふるい、東北地方を中心に死者20人以上を出している。

 台風は暴風や大雨に限らず高潮、雷、竜巻などが合わさり、多重災害化する危険性がある。

 昨年10月の台風19号は記録的大雨を伴い大雨特別警報が13都県に出て、東日本に甚大な被害をもたらした。

 各地で河川が氾濫し、濁流は住宅街も襲い、土砂崩れが相次いだ。広範囲で停電し、断水にも見舞われ、首都圏の交通網はストップした。

 九州は今年、7月の記録的豪雨により各地で地盤が緩み、河川の堤防や護岸も傷んでいる。楽観できる要素はない。

 自宅や職場はどんな災害に遭う危険があるのか、地元市町村作製のハザードマップで確認したい。近くに河川や崖がないかを調べ、体育館など最寄りの避難所の位置を確かめたい。

 状況によっては避難所に向かう方が危険な場合がある。自宅2階以上にとどまったり、知人や親戚宅に身を寄せたりする「分散避難」は有効な選択肢だ。

 各家庭でも非常食や水、携帯電話のバッテリーに不足はないか、感染防止用のマスクや消毒液、体温計はそろっているか、事前に点検を重ねたい。

 近年の台風は地球温暖化を背景に、高い海面水温で発生する水蒸気をエネルギーにして勢力を増しているとされる。水蒸気の大量発生は今年7月の豪雨の要因ともみられている。

 過去の台風上陸数を都道府県別でみると、鹿児島が1位、長崎5位、宮崎6位、熊本9位と九州から4県が10位内に入っている。とにかく油断は禁物だ。

 市民一人一人が命を守る最善の策を考え、備えたい。

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