「神聖」タイ王室に批判続々 政府は警告、緊張高まる

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 【バンコク川合秀紀】タイで絶対的な存在として神聖視される王室について、公然と批判する声が出始めた。不敬罪があるため王室批判は長年タブーとされており、異例の事態。若手弁護士が今月初め、集会の演説で王室改革を訴えたことを機に、反政権を掲げる他の学生グループなどが相次いで公言するようになった。一方、政府は王室批判を取り締まる方針を強調、国内メディアに批判内容を報じないよう命じたとの情報もあり、緊張が高まっている。

 タイでは7月以降、大学生らがプラユット首相退陣や憲法改正などを求める反政府集会を連日開催。地方にも広がる中、今月3日の街頭集会で、不敬罪に詳しい人権派弁護士アノン氏が王室をテーマに演説し、王室への予算配分や権限委譲が「(憲法で定める)『国王を元首とする民主主義』から逸脱している」と述べ、王室について開かれた議論が必要と主張。異例の言動としてインターネットですぐに話題となった。

 アノン氏は7日、この演説とは関係ない集会での扇動の疑いなどで逮捕されたが、保釈後も相次ぎ集会に現れ、同様の王室改革を要求。呼応して他の学生や活動家も演説や会員制交流サイト(SNS)で直接的な王室批判を展開している。

 一方、当局は2018年半ばから刑法に基づく不敬罪の摘発を見送っている。ワチラロンコン国王の指導とされ、プラユット首相も6月、この事実を認めた。だがここに来て相次ぐ王室批判について首相は「違法行為は罰せられる」と批判し、治安当局幹部も「集会は自由だが王室を批判しないように」と重ねて警告。11日には当局が地元メディア各社に王室批判の内容を報道しないよう命じたとの情報がある。主要紙の編集幹部は取材に対し、命令があったことを認めた上で「状況は非常に緊張状態にある」と語った。

 国王の母親で前王妃の誕生日の12日、欧州滞在の多い国王が一時帰国するのに合わせた学生らの大規模集会が予定されていたが、前日に「混乱を避けるため」として中止となった。ただ今後も数千人規模の集会が予定されている。

 タイ政治に詳しい水上祐二タマサート大客員研究員は「『タイ式民主主義』への根本的な疑問が提起されたのは初めて。王室に関する議論が許されなかった国で一石を投じたのは間違いない」とした上で「急進的な主張が広い支持を得られるかは疑問。王党派の反発も強いため、衝突が懸念される」と語った。

PR

国際 アクセスランキング

PR

注目のテーマ