大陸でレンズ通し見たものは… 蛇腹式カメラ

西日本新聞 ふくおか版 帖地 洸平

 大陸へ渡ったカメラは、何に出会い、何を写したのだろう。福岡市博多区の県吉塚合同庁舎には、県民が寄贈した約6千点の戦時資料が保管されている。その中の一つに、ドイツ製の蛇腹式カメラを見つけた。

 県行政経営企画課によると、持ち主は大牟田市出身の執行久男さん(享年25)。中国の戦地へ出征する際、荷物とともに携えていた。執行さんは二度と祖国の土を踏むことはかなわなかったが、カメラは水筒や双眼鏡とともに遺族の元に届けられたという。

 執行さんの人柄について、妹の古野鈴恵さん(83)=北九州市=が語ってくれた。「兄は幼い私や家族の記念写真を撮るのが好きだった。戦地ではきっと、友人のくつろいだ様子や自分の気持ちが休まる景色にシャッターを切ったのではないでしょうか」

 許可を得てカメラのファインダーをのぞかせてもらった。友の笑顔と心安らぐ穏やかな情景-。戦場の殺伐とした風景とは対照的なほのぼのとした被写体を思い浮かべてはみたものの、どれもはかなく消え入る残照のように思えた。そんなかすかな光の後を、非業の死を遂げた青年の影が追い掛け、追い越していく。この晴れぬ気持ちは、どれほど時が流れようと変わらないだろう。戦争の傷がいつまでも癒えることがないのと同じように。

 =おわり

 (帖地洸平が担当しました)

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