命輝く熊本の夏描く 絵本「なっちゃんのなつ」 詩人伊藤比呂美さん

西日本新聞 熊本版 壇 知里

植物の盛衰テーマに 産経児童出版文化賞受賞

 本紙で人生相談「比呂美の万事OK」を連載している詩人伊藤比呂美さん(熊本市)が、絵本「なっちゃんのなつ」(片山健さん作画、福音館書店)で、産経児童出版文化賞・美術賞を受賞した。熊本の植物の力強さをモチーフに生命力や死の陰影を表現し「日本の夏を描ききっている」と評価された。

 同作は、米カリフォルニアに暮らしていた伊藤さんが、両親が住む熊本と行き来する中で着想を得て、2003年に月刊「かがくのとも」に発表した。植物のエネルギーに目を向ける伊藤さんの記念碑的作品として、昨年、単行本化された。

 主人公は、お盆に自然と触れ合いながら遊ぶ少女「なっちゃん」。近くの家の庭に赤いサルビアが咲き、河原にはオオアレチノギクやヒメムカシヨモギの群落。一方で、しおれたヒマワリ、河原で魚をのみ込むアオサギ、セミの抜け殻や死骸など、循環する生命と切り離せない死も描かれる。

 「実は死がテーマの作品」と伊藤さん。受賞の講評でも「あの世とのつながりを思わせる要素がある」とされた。

 創作のきっかけは、自宅に近い熊本市の坪井川沿いを幼い娘や愛犬と歩いた盛夏の日の体験だ。

 緑の葉に反射する太陽の強さに目が開けられない。「日本の夏がどんなに過剰でどう猛で、ものが生きたり死んだりを繰り返すエネルギーに満ちているかということが、日本を離れて初めて分かった」。地中海性気候のからっとしたカリフォルニアと違い「じめっとして不快」と感じていた日本の夏を、恋しく思うようになった。

 詩集「河原荒草」(05年)は高見順賞、独自の文体が注目された「とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起」(07年)は萩原朔太郎賞と紫式部文学賞を受賞した。高い評価を受けた両作に先駆けて植物を描いた「なっちゃんのなつ」も時を隔てて賞に輝き、「つながりのある三つの作品のうち最初の作品。受賞はうれしい」と伊藤さん。福音館書店の担当者は「誰しもが経験した『あの夏』に連れて行かれる、大人にも人気の作品。もうすぐ夏本番の今にぴったりの一冊です」と話している。

 (壇知里)

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