8.15「祈りのサイレン」実施に地域差 継承の一つ、苦情に配慮も

西日本新聞 社会面 中原 岳 金沢 皓介

 75回目となる終戦記念日の15日、どこかで追悼のサイレンを耳にしただろうか-。戦没者を悼み、街中や集落で正午にサイレンが鳴り響く光景は、どの自治体でも見られるものではない。九州7県の県庁所在地と政令市の計8市のうち熊本や長崎など6市は終戦記念日に加え広島、長崎両市の原爆投下時刻にサイレンを鳴らすが、福岡、北九州両市ではない。戦争体験者が少なくなる中、75年前の「あの日」に思いをはせる機会の一つをとっても、地域差がある。

 「ウーーーー」。15日正午、うだる暑さの熊本市内にサイレンが1分間鳴り響いた。中心部の下通アーケードを歩いていた大学2年の村上公信さん(19)=同市北区=は足を止め、目を閉じた。「毎年しっかり黙とうをしていて、いい意識付けになっている。悲惨な歴史を繰り返してはいけない」と語った。

 市によると、市役所本庁舎や公民館、公園など288カ所に設けるスピーカーでサイレンを鳴らし、ほぼ全域で聞こえるという。大西一史市長は、西日本新聞の取材に対し「戦争の記憶が薄れる中で語り継ぐことや受け継ぐことは行政の使命。サイレンは小さなことかもしれないが、継承の一つとして大事にしている」と語った。

 被爆地・長崎市も市全域にあるスピーカー463カ所でサイレンを流す。原爆投下時刻の9日午前11時2分、サイレンに合わせて市民が街角で立ち止まり、犠牲者に黙とうをささげる姿が多く見られる。

 自治体の中には地域を限定しているところもある。佐賀市は無線のスピーカーがある194カ所のうち、鳴らすのは126カ所。「平成の大合併」前の旧市内は市役所本庁舎でしか鳴らない。理由について担当課は「資料がないので不明だが、市民を驚かせないように配慮したのでは」と話す。

 鹿児島市も市役所本庁舎と支所の計10カ所でしか流れない。それでも市民から「うるさい」と苦情が寄せられたことがあり、担当者は「趣旨は分かってもらえていると思う」と困り顔だ。

 一方、サイレンが鳴らない福岡市。「豪雨時に聞こえにくい」として、そもそも屋外にスピーカーを設置していない。長崎原爆の当初の投下目標だった北九州市では、津波対策用のスピーカーが沿岸部にあるだけで、鳴らしていない。

 大音量で流れる1分間のサイレンをどう受け止めるのか。熊本市ではこの日、普段と変わりなく道行く人の姿が見られた。高校2年の女子生徒(16)=同市中央区=は「終戦記念日は知っていたけど、サイレンを聞いても足を止めるまではしなかった」と話した。

 黙とうをささげた女性(77)=同=は訴える。「苦労をして日本をつくってきた人たちがいて、今の平和な世の中がある。先祖に対して感謝の思いで手を合わせた。先の大戦を、そして終戦の日を、忘れてはいけない」 (中原岳、金沢皓介)

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ