原発、石炭どう幕引き 吉田昭一郎

西日本新聞 オピニオン面 吉田 昭一郎

 世界では、化石燃料や原発から再生可能エネルギーへの転換が劇的に進んでいる。それに驚かされた。

 太陽光発電の発電設備量はここ10年で27倍の630ギガワットに急増し、風力発電も4倍の650ギガワットに増えている。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、2050年には再生エネが電力の86%を占めると予測する。

 福島第1原発事故から10年目。今春から本紙ウェブサイトで連載「あの映画 その後」を続けている。第4部で取り上げたドキュメンタリー映画「日本と再生 光と風のギガワット作戦」(2017年、ネット無料公開中)は再生エネの先進地を訪ね、人々に話を聞く。環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也さんが企画・監修を務めた。

 取材でひしひしと感じた世界のエネルギー転換のうねりを、日本であまり実感できないのはなぜだろうか。

 思い当たるのは福島第1原発事故の後に誕生した安倍晋三政権だ。再生エネにかじを切らずに、原発再稼働と原発輸出を推進し、石炭火力を温存した国策が、ある種の重しになって、再生エネ普及へ向けた議論をはばからせている面があるのではないか。

 再生エネは地球温暖化による気候変動の歯止めとなる。核のごみを将来に押しつけず、人々に長期の避難生活を強いる過酷事故とも無縁。弱点とされた発電の不安定さも欧州などでは電力の需給調整・融通システムや大型蓄電池の開発で克服されつつある。

 再生エネの普及を本気で考えるほど原発や石炭火力が邪魔になる。経済産業省や電力業界に正面から議論を避ける向きがあるのは、速やかな原発停止と石炭火力からの撤退論に拍車が掛かるのは困るからだろう。しかし、議論停止のつけは確実に回ってくる。

 日本の再生エネは全電力の10%台にとどまる。福島第1原発事故後、脱原発に転換し脱炭素化も推進するドイツは既に40%を超え、30年の目標「50%以上」へ迫っている。

 人類の生存に関わる問題である。原発と石炭火力にしがみついているわけにはいかない。国と電力会社は、原発と石炭火力からの出口戦略をどう描いているのか、再生エネにどう向き合うのか、国民に説明して議論を起こす時だ。

 「原発にしがみつくのは『今だけ、会社だけ』だからじゃないですか」。この映画の監督で弁護士の河合弘之さんは、目の前の燃料費だけが再稼働の動機になっている現実を問いかける。 (クロスメディア報道部)

 ※連載は「あの映画 その後」で検索。

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