「小さなステージ守りたい」福岡のプロ音楽家26人タッグ 13カ所結びリレー演奏動画【動画あり】

西日本新聞 加茂川 雅仁

 福岡市を拠点に活動するプロの音楽家26人が、コロナ禍で困窮する「小さなコンサートステージ」を守ろうと、新たな挑戦を始めた。会場となってきたカフェやレストランなど13カ所でリレー演奏する動画を制作し、各店を紹介するウェブサイトも立ち上げる。自分たちを育ててくれた場に恩返しするとともに、音楽の街・福岡の健在ぶりをアピールする。

馬頭琴を弾くタンガード・マイラスさん

 企画したのは、バイオリニストの太田圭亮さん(50)。イタリア人奏者と弦楽四重奏団を組み、今年は福岡市とナポリで公演する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止になった。「何ができるかを考える日々が続いた」なかで、これまで生演奏していた店が、営業自粛で窮地に陥っていることを知った。

 幼い頃にバイオリンを始めた太田さんは、大学卒業後もアルバイトの傍らプロを目指した。カフェなどで演奏し実績を積み重ねたことで、海外でもリサイタルを開けるまでになったという。

 「演奏家には腕を磨ける小さなステージが絶対に必要。コロナが収束しても、その大切な場所がなくなっていたら、取り返しがつかない」

 仲間にリレー演奏のアイデアを投げかけると、25人が賛同した。「密」を避けるため2、3人ずつ13カ所に分かれて演奏し、1曲の動画に編集する計画。ステージの存在を知ってほしいという願いを込め「福岡・こんなとこあるよプロジェクト」と名付けた。

 賛同した一人が、ジャズを中心に国内外で活躍するピアニストの岩崎大輔さん(61)=動画。3月の米国公演が中止となり、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」での定期演奏も、休止を余儀なくされた。

 「今できることをやりたい。動画にすれば客観的に自分を見られて、スキルアップできる可能性もある」。動画編集を覚え、音楽監修も引き受けた。

 用意した曲は、福岡らしさを伝える「黒田節」に始まり、クラシックやジャズ、邦楽などを織り交ぜて展開する。管弦楽器だけでなく、パーカッション、そう、鼓、筑前琵琶などに歌を加えて21種類がハーモニーを奏でる。

撮影に臨んだ(左から)トランペットの古賀敦子さん、ユーフォニウムの熊川亜希さん、トロンボーンの堀さゆりさん

 会場の一つ、クレモナ楽器(福岡市中央区)では7月、トランペットの古賀敦子さん(45)、ユーフォニウムの熊川亜希さん(41)、トロンボーンの堀さゆりさん(51)が収録に臨んだ。3人とも九州唯一のプロ吹奏楽団「九州管楽合奏団」で活動するが、収入ゼロが続いている。

 「そういえば年が明けて対面してないかも。今日が明けましておめでとう、だよね」と言い合って笑った後、「笑えないけど」と付け加えた。

 クレモナ楽器の伴義則社長(74)によると「吹奏楽は息を吹くのでなおさら敬遠される」という悩みがあり、公演の再開には踏み出せていないという。

馬頭琴奏者のタンガード・マイラスさん

 馬頭琴のタンガード・マイラスさん(32)は中国・内モンゴルから来日して12年。モンゴル料理店(中央区)を今年2月末にオープンし、店で演奏もしていたが、コロナで2カ月間休業した。

 「日本が好きでやっと店も開けたのに、悔しかった。でも、みなさんが応援してくれるので頑張る気持ちになれた」。動画では迫力のあるソロを披露している。

 会場となった13カ所はいずれも福岡市内で、イエナコーヒー▽イズタ・バイオリン▽イタリア会館▽カフェクリムト▽グランレガート▽クレモナ楽器▽黒猫屋珈琲店▽カフェスタジオこと▽東方遊酒菜ヌワラエリヤ▽箱崎水族館喫茶室▽日時計の丘▽宮の杜ギャラリーもも庵▽モンゴル薬膳火鍋。

 言の波(南区)の店主、蒲原久朋さん(36)は「ミニコンサートを再開したが、密を避けるため多くのお客さんは呼べない。この企画をきっかけに、配信にも力を入れたい」と意気込む。

 太田さんは「配信を始めたミュージシャンは多いが、音のクオリティーや収益など課題は多い。今回できたネットワークを生かして、みんなで考えていきたい」と話している。

 動画は8月末に仕上げ、動画投稿サイトユーチューブ」で公開する計画だ。

(加茂川雅仁)

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