バイデン氏支持熱気なく 好印象も「話題にならず」 保守層に異変も

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

米激戦州ルポ

 【ミルウォーキー田中伸幸】米大統領選で共和党トランプ大統領の再選阻止を目指す民主党の党大会が20日夜、閉幕した。新型コロナ禍で異例のバーチャル大会となり、拠点となった中西部ウィスコンシン州には大統領候補に指名されたバイデン前副大統領をはじめ、大勢の党関係者の姿もなく、「打倒トランプ」の熱気は感じられない。自宅で大会を視聴した多くの支持者や無党派層はどう見たのか。前回選挙で民主党候補が1ポイント弱の差で惜敗した激戦州を歩いた。

 4日間の党大会を州北東部の自宅で妻とテレビで視聴した農家のマイケルさん(74)は、既に支持することを決めているバイデン氏の指名受諾演説を聞き終えると納得した様子で語った。「人間関係を大切にする彼の愛情深さが、情熱的によく表現できていた」

 どんな内容になるか想像もつかなかったというバーチャル大会についても「従来のように演説が歓声で遮られることもなく、主張が明確に伝わったのではないか」と満足げだ。

 似たような好印象は、同州で勝敗の鍵を握るとされる女性層からも聞かれた。

 「思わず目頭が熱くなった」。ミルウォーキー郊外の自宅で、副大統領候補のハリス上院議員の演説を聞いた民宿運営のパメラさんは熱く語った。ハリス氏が米国女性の参政権が認められて今月で100年を迎えたことに触れ、投票権を求めて闘った女性活動家の名を次々と挙げ、民主主義の大切さを訴えたからだ。

 過去に共和、民主両党の大統領候補に投票したことがある無党派層のパメラさんは、トランプ政権下で民主主義が軽視されていると感じており、ハリス氏の演説に「希望を感じた」という。ハリス氏の存在は、バイデン氏の勝利に欠かせない、こうした「揺れる有権者」を引きつける可能性を秘めている。

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 ただ、「岩盤支持層」と呼ばれるトランプ氏の熱狂的な支持者が持つような熱気は、バイデン氏の支持者からは依然として感じられない。

 「党大会の最中なのに、知人や仕事先の人でバイデン氏のことを話題にする人は一人もいなかった」と話すのは、パメラさんと同じ郡に住む介護事業者ローラさん(54)。自身もかつて両党の候補に投票し、今回もトランプ、バイデン両氏の演説をチェックしているが「ハリス氏には期待できても、発言がたどたどしく感じられるバイデン氏を支持する気にはなれない」。

 民主党支持の男性(65)ですら「支持者の熱気なしでは勝利はおぼつかない」と気をもむ。

 対照的に、トランプ氏が民主党大会初日の17日に州内で開いた選挙集会に参加した共和党地方支部の男性幹部(58)は「4年前より明らかに盛り上がっていた」と興奮を隠さない。

 ミルウォーキー近郊で19日にあったトランプ氏支持の女性向け集会には、コロナ禍にもかかわらず中高年の女性が次々と訪れ、陣営が用意した自宅前に設置するトランプ氏の名前入り看板を入手する人もいた。

 とはいえ、男性幹部はバイデン・ハリスの民主党コンビが脅威になり得ると警戒する。「今回2人はウィスコンシンに来なかったが、今後来れば盛り上がり、女性や黒人層、若い有権者がなびく可能性はある」

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 トランプ氏のコロナ対応を評価できず、バイデン氏支持に大きく傾くパメラさんは最近、自宅近くの保守層が多い住宅街である異変に気づいた。

 「4年前には驚くほど多くのトランプ氏の看板があったが、今は10分の1くらいしかない」

 単に選挙までまだ2カ月余りあるからなのか、それともトランプ氏支持者に心変わりが生じているのか…。「私は後者じゃないかなと思っている」。そう語る表情に、少し笑みが浮かんだ。

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