「親子三代、継承に使命感」普及活動を続ける能楽師

西日本新聞 筑豊版 丸田 みずほ

 ≪能楽の技法を高度に体現しており、重要無形文化財「能楽」の保持者にふさわしいとして、今年、保持者の団体「一般社団法人日本能楽会」の構成員に追加認定されることになった≫

 まさか選ばれるとは思っていなかったので、聞いた時は驚きました。長年、能を続けている中で支えてくださったみなさんのおかげだと思っています。

 ≪年1回、能や狂言を披露する「飯塚能の会」を開催。福岡市や東京の舞台にも立つ≫

 能は前日に出演者が集って「申し合わせ」という、いわゆるリハーサルをします。合わせるのは、たった一度だけで、装束も着けません。あとは本番を待つのみです。公演期間は一日限りなので、本番は今でもすごく緊張します。

 ≪親子三代能楽師で、自身も2歳ごろから能を始めた≫

 幼い頃から父が舞う姿を見てきたので、自然な流れで始めました。初舞台は9歳の時。当時は父と同じ道に進むとは思っていませんでした。

 ≪短大卒業後、能楽師になると決めた≫

 短大卒業の年に祖母が倒れ、介護のために地元に戻ることになりました。そこで、自宅にある舞台で稽古する父を見て、介護をしながら中学以来の能を再開することにしました。

 短大生の頃はちょうどバブルの時代で「就職してボーナスをもらってみたい」などという話で友人と盛り上がり、OLに憧れていた時期もありました。でもうちは親子代々能楽師の家。次第に能を続けていく使命感が生まれ、家を継ぐことに決めました。この道に進んだことに、後悔はありません。

 ≪現在、18人の弟子と稽古をしている≫

 70~80代の方が主流で、お稽古は月2回のペースでしています。父の代には100人近くいたようなので、だいぶ人数が少なくなりました。

 ≪2003年には能の普及活動を行う「雛謳(すうおう)会」を立ち上げた。会では毎年、子ども向けの能教室を開いている≫

 これから先、私にできることは何だろうと考えました。もともと子どもが好きなので、子どもにも能を体験してほしいと思いました。能教室には幼稚園生の子が小学校高学年、小学生が中学校高学年になるまで通ってくれたこともありました。

 昨年からは親子で参加できるようになりました。保護者の方は「いやいや私は…」と言う人が多いですが、今年は積極的に参加してくださる方がいてうれしくなりました。自宅に戻ってから親子で感想を伝え合うなどコミュニケーションがとれるのはいいと思います。

 ≪見に来てくれるお客さんを増やしたい≫

 能は難しいと言われ、私も「そうよね」と思います。能には余分な動きや大きな舞台装置はなく、見る人の想像によって物語の捉え方が変わるので「正解」はありません。

 一つの楽しみ方として、例えば大鼓、小鼓などの囃子(はやし)や、装束に注目する方法もありますよ。最近は公演のパンフレットに演目がどんな内容なのか書いてあることも増えました。

 子ども向け能教室は、何年か後に公演に足を運んでくれるきっかけにつながるかもしれないとの思いで開いています。今後も飯塚で能を続けられたらいいなと思います。 (丸田みずほ)

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