北朝鮮消えた軍事挑発 コロナ、豪雨影響か?与正氏に一部権限委譲も

西日本新聞 国際面 池田 郷

 【ソウル 池田 郷】北朝鮮が6月に開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破して以降、米韓への軍事的挑発を自制し、不気味な沈黙を続けている。新型コロナウイルス感染防止のため中国との国境を封鎖したことや、豪雨被害に伴う経済的な困窮が影響している可能性がある。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が妹の金与正(キムヨジョン)党第1副部長らに一部権限を委譲したとの見方が浮上しており、体制内部の事情も背景にありそうだ。

 米韓が18日、定例の合同軍事演習の規模を縮小して開始してから、北朝鮮は22日まで表立った反応を控えている。米韓が3月にも規模を縮小した演習を行った際の対応とは対照的だ。当時、北朝鮮の外務省報道官は演習について「侵略的」と強く反発。軍は同月中に短距離弾道ミサイルを4回にわたり発射した。

 ところが直後の4月、正恩氏の体調不良説が浮上して以降、弾道ミサイル発射は途絶えた。与正氏が主導した南北共同連絡事務所の爆破など韓国への揺さぶりも、さらなる軍事行動予告は正恩氏が「待った」を掛ける形で沙汰やみとなった。

 北朝鮮の抑制的な対応について、国内事情と関連付ける見方が韓国内で広がっている。北朝鮮は1月、コロナ拡大を警戒して中朝国境を封鎖。韓国貿易協会によると、今年上半期の中朝貿易は前年同期比67%減の4億1200万ドル(約435億円)に急落した。今月の豪雨被害も追い打ちとなり、19日の党中央委員会総会の決定書には「厳しい内外情勢が続き、国家経済の成長目標はほとんど達成できなかった」と明記された。

 正恩氏が与正氏らに一部権限を委譲する「委任統治」を行っているとの見方は韓国の情報機関、国家情報院が20日に国会の情報委員会(非公開)で示した。出席した議員によると、情報院は「正恩氏のストレス軽減」「政策が失敗した場合の責任回避」が狙いだと指摘。一方で「根本的には約9年間の統治に伴う自信の表れ」と分析し、正恩氏の健康不安説は否定した。

 北朝鮮には今年下半期、二つの重要な政治日程が控える。10月の党創建75年と11月の米大統領選だ。当面は権限委譲による国内の体制固めや経済の立て直しに重きを置き、軍事挑発を含めた今後の対外方針は米大統領選の行方をにらみつつ探っていくことになりそうだ。

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