「最長宰相」に最大のピンチ 安倍政権の体力は保てるか

あす大叔父・佐藤栄作超え

 24日、第2次政権の連続在職日数で大叔父の佐藤栄作を抜き、歴代1位となる安倍晋三首相。この間、経済政策アベノミクスを掲げて国政選挙を5連勝し、「安倍1強」を謳歌(おうか)してきた。だが今年、新型コロナウイルス感染症の対応で局面は一変した。内閣支持率は低空飛行し、さらに8月に入り健康不安説が急浮上。「最長宰相」の栄誉と時を同じくして、最大のピンチが到来している。

 「体調管理に万全を期すために検査を受けた。これから仕事に復帰して頑張っていきたい」

 19日昼、わずか3日間の夏期休暇を終えて官邸に戻った首相は記者団に対し、自身の心境をこう説明した。言葉こそ意欲的だが、声量は小さく目にも力がこもらない。直後に面会した側近の萩生田光一文部科学相は、「(もっと)夏休みを取った方がいいですよ」と懇願した。

 首相に異変が生じたのでは、との臆測が永田町を一気に覆い尽くしたのは17日。「検診」との理由で、都内の病院に約7時間半にわたり滞在したためだ。第1次政権時、2007年7月の参院選に大敗した後、持病の潰瘍性大腸炎を悪化させ、9月に唐突に退陣した過去とその姿が重なった。

 予兆はあった。ウイルス対応で、首相は1~6月に147日間連続で執務。通常国会が閉会した後は、野党の閉会中審査への出席要求に応じず、記者会見も1カ月半の間行わなかった。夜の会合も数えるほどで、「巣ごもり」と評された。毎夏恒例の地元・山口県入りや山梨県の別荘での静養も取りやめた。

 「さまざまな疲れが蓄積しているのは間違いない」と官邸官僚たち。首相は「休むと批判される」とかたくなになっていたため、後見役の麻生太郎副総理兼財務相が15日に私邸を訪れ、「静養してまた陣頭指揮を執ればいい」と説得。ようやく翌16日から夏休みを取ったという。

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 昨年11月。通算の在職日数で戦前の桂太郎を上回り、歴代最長の座に就いた時点では、首相の求心力はまだ安泰だった。第2次政権は一貫して「経済最優先」の姿勢をアピール。集団的自衛権の行使容認など国論を二分する政策や、森友、加計(かけ)学園問題などで追及を受けても、国政選挙勝利をてこに内閣支持率を高く保ってきた。

 だが、国民の命と健康、社会経済活動の両方を脅かす新型コロナが「転換点」となった。アベノマスクをはじめ政権の対策は迷走し、頼みの経済も国内総生産(GDP)が戦後最悪の落ち込みとなり、支持率は危険水域に近づく。「何をやってもうまくいかない。なぜなんだ-」。首相は最近、いらだちを隠さなくなった。

 レガシー(政治的遺産)と位置付けた東京五輪・パラリンピックも来夏に延期され、開催実現は不透明だ。「沖縄返還」を成し遂げた佐藤栄作を引き合いに昨年末、麻生氏から「あなたの4文字は何か」と問われた首相は「憲法改正」と即答したものの、残り1年余りの党総裁任期中の実現は絶望的。ロシアとの北方領土交渉や、北朝鮮による日本人拉致問題も進展が見通せない。

 残暑とともに降ってきた健康不安説は「志半ばでの退陣の悪夢」を再び、世論に想起させている。首相との距離感がそれぞれ異なる自民党の岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、政権の番頭格の菅義偉官房長官らによる「ポスト安倍」を巡る水面下の策動も、激しさを増してきた。首相は昨秋と同様に内閣改造、党役員人事を断行し、体制の立て直しを図りたい意向とみられるが、目指す9月中旬ごろにその“体力”は保たれているだろうか。 (前田倫之)

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