トルーマンの孫に会う 目に焼き付けてほしかった姿 原爆を背負って(75)

西日本新聞

 2012年夏、長崎、広島に原爆投下を命じたトルーマン元米大統領の孫クリフトン・トルーマン・ダニエルさん(56)が、被爆地を訪れました。最初にその話を聞いたとき、胸に抱いたのは警戒感でした。

 ダニエルさんは、広島の平和記念公園にある「原爆の子の像」のモデルになった佐々木禎子さんの兄雅弘さんが招きました。雅弘さんは、米同時多発テロに遭った世界貿易センタービル跡地を訪れた10年に、ダニエルさんと出会ったそうです。

 12年8月、ダニエルさんは広島に続いて長崎を訪問しました。原爆を投下したB29に搭乗したレーダー士の孫も一緒です。私は2人に被爆体験を話すことになっていました。

核兵器廃絶に向け、ダニエルさん(右から2人目)とも手を取り合って行動できればと思います

 場所は国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館。犠牲になった人々を慰霊する静寂に包まれた空間です。多くの被爆者が求めた水の音が聞こえる部屋で、2人と対面しました。

 赤い背中の写真や数年前に撮った背中の写真を見せながら、話をしました。向こうからは何の質問もないし、何をしに来たのかも話さない。段々、腹が立ってきました。気が付くと、上着を脱いで背中の傷痕をさらしていました。

 「米国はウラン型とプルトニウム型の原爆の威力を試し、誇示することで、戦後外交を優位に進めようとした」と指摘する学者がいます。私もそう思う。孫の世代に恨み言を言っても仕方ないのは分かっていますが、トルーマン元大統領が行った人体実験が何を招いたのか、その目に焼き付けてほしかったんです。

 何十年たっても、原爆投下を許すことはできません。私だって、普通の青春を送りたかった。普通の生活を送りたかった…。米国が原爆投下を謝罪することはないかもしれない。それでもいいんです。核兵器廃絶を実行してくれるなら。それが何よりの謝罪になると思います。

 ダニエルさんは私に「被害を忘れないことが大切だと思う。できることを力を尽くして頑張りたい」と話し、米国で本を出す考えを明かしました。今年も長崎を訪れ、私や別の被爆者の話を聞いて帰っています。

 原爆投下を命令した大統領の孫が被爆者と会った体験を本にすれば、話題になるでしょう。原爆被害を伝え、二度と被爆者を生まないようにメッセージを発信してもらえればと思います。(聞き手 久知邦)

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 「原爆を背負って」の英訳版「THE ATOMIC BOMB ON MY BACK」が米国で発行されました。同国で自費出版する日本原水爆被害者団体協議会(被団協)は初版500部の発行に必要な資金70万円をクラウドファンディングで募りました。

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