豪雨「脱ダム」揺らす 建設の議論再燃 「川辺川」中止当時の想定超え

西日本新聞 総合面 古川 努 綾部 庸介

球磨川の流量許容の2倍

 熊本県南部の豪雨を契機に、氾濫した球磨川の治水を巡る議論が活発化している。焦点は、2009年に建設が中止された「川辺川ダム」。線状降水帯がもたらした洪水はダム推進、反対の双方が当時主張していた想定を超え、治水策の「土台」が揺らぐ。いかにして流域住民の生命と財産を守るのか-。行政と流域は、大きな課題を突き付けられた。

 「川辺川ダムがあれば被害は軽減された」-。25日、国土交通省九州地方整備局と県、流域12市町村長らが集まった「球磨川豪雨検証委員会」の初会合で、九地整が示した検証結果の趣旨だ。

 九地整はこれまで「80年に1度」の洪水に対応できる基準として、人吉市付近の球磨川のピーク流量を毎秒7千トンに設定。これを川辺川ダムや既存の県営市房ダムで貯水し、流量を同4千トンに抑える方針を基本として議論してきた。

 だが、想定を超える豪雨で、この「土台」は崩れた。検証結果では、現状で毎秒3600トンしか安全に流せない地点の流量が、ピーク時には同7500トンに達したと推定。1秒間に3900トンもの水が、川からあふれたことになる。

 従来の基本方針では対応できなくなったことで注目を集めているのが、11年前に「幻」で終わったはずの川辺川ダム。ダムは国が1966年に計画を発表したが、地元で根強い反対運動が続き、2008年に初当選した蒲島郁夫知事が反対を表明。09年に当時の民主党政権が中止を表明した。その後、国や県、流域自治体は「ダムによらない治水」の協議を続けてきたが、まとまらないうちに、7月の豪雨災害に見舞われた。

 ムードは一変した。流域12市町村でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」の会長でもある森本完一錦町長は、検証委で「ダム建設を含む抜本的な対策を」と声を上げた。芦北町の竹崎一成町長は「総合的な治水対策から川辺川ダムは排除できない」と踏み込んだ。

 検証に「スピード感」を求める声も相次ぐ。被災した道路や橋、宅地のかさ上げの高さも決められないからだ。人吉市の松岡隼人市長は「街の今後の在り方も治水対策と同時に考える必要がある」。球磨村の松谷浩一村長は「検証委がスピード感を持たないと村の復興も遅れる」と訴えた。

   ■    ■ 

 ダム反対派の動きも急だ。23日に熊本市内で集会を開き、登壇者は「ダムは想定以上の雨で満水となり緊急放流する。ダムは対策から除外されるべきだ」とけん制した。主催者の一つ「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(80)は、国の検証結果に対して「雨の降り方や支流の状況を無視した結果だ」と異論を唱える。

 検証委の初会合後、蒲島氏は報道陣に「川辺川ダムは選択の範囲」と明言。結論の時期を問われると「年内」と期限を切った。12年前、「脱ダム」を決断した知事の胸中も、揺れている。 (古川努、綾部庸介)

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