IR「証人買収」 司法揺るがす重大容疑だ

西日本新聞 オピニオン面

 容疑の通りであれば、言語道断というほかない。国会議員が汚職に手を染めた上、その罪を免れるために裁判所を欺こうとした-とされる重大な事件である。真相の徹底解明が必要だ。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡り、収賄罪で起訴された衆院議員、秋元司被告(自民を離党)が、組織犯罪処罰法違反(証人等買収)の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。逮捕は3度目となる。

 秋元被告はIR担当副大臣だった2017~18年、IR事業参入を目指す中国企業の元顧問らから約760万円相当の賄賂を受け取ったとして起訴され、今年2月に保釈された。

 今回の容疑は保釈後の6~7月、支援者らと共謀し、贈賄側に裁判で起訴内容を否定する虚偽の証言をするよう持ち掛け、報酬として1千万~2千万円を渡そうとしたというものだ。

 秋元被告は容疑を全面否認しているという。ただ地検は先に支援者ら3人を同容疑で逮捕、起訴し、その供述などから秋元被告が買収工作を主導した疑いがあるとみている。

 証人等買収罪は、17年の組織犯罪処罰法改正に伴い、いわゆる「共謀罪」と併せて新設された。本来、マフィアなど国際犯罪組織を取り締まるため司法への妨害行為を排除することが目的とされている。その初適用が国会議員の汚職事件に絡むケースとなり、驚きと政治不信の波紋は大きく広がった。

 今回のような証人買収がまかり通れば、犯罪の立件はもとより、裁判の公正さも揺るがしかねない。特捜部は事実関係や金の流れなどを詳しく解明し、その内容を今後の公判などで明らかにすべきだ。

 秋元被告の保釈中の行為が容疑となったため、一部から保釈要件の厳格化を求める声も出ている。しかし、日本の裁判所で近年、保釈を柔軟に認める例が増えている背景には、身柄拘束が長期化しがちな「人質司法」への批判がある。厳格化には慎重な議論が必要で、木を見て森を見ずとなっては困る。

 他方、政府が秋元被告の再逮捕について静観を決め込んでいることも問題だ。安倍晋三政権が成長戦略の目玉の一つとして打ち出したIR事業である。一部の自治体は誘致に動いているものの、一連の事件を通じて事業が利権や不透明な金の流れを生む危うさもあぶり出された。

 ギャンブル依存症のまん延や治安の悪化を懸念する声も根強い。新型コロナウイルスの感染拡大で海外のカジノ事業者の日本進出は当面見込めないとの観測もある。政府はこうした状況を真摯(しんし)に受け止め、IR事業の在り方を見直すべきだ。

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