財政健全化 安易な先送り繰り返すな

西日本新聞 オピニオン面

 2025年度まで、まだ時間がある。近づいたらまた先送りすればいい-。そう安易に考えているのではないか。政府の財政健全化目標のことだ。

 新型コロナウイルス感染拡大により財政の悪化が一層深刻になっている。各種対策のため支出は増える一方だからだ。

 内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」によると、財政の健全度を示す基礎的財政収支プライマリーバランス、PB)は国と地方の合計で25年度に7兆3千億円程度の赤字が残る見通しになった。必要な政策的経費を税収等で賄えない赤字幅が1年前の試算より5兆円拡大した。25年度に国と地方のPBを黒字化する政府目標の達成は一段と難しくなった。

 にもかかわらず担当閣僚の言葉からは危機感が伝わらない。西村康稔経済再生担当相は「25年度の黒字化(目標)を引き続き堅持して目指していきたい」と言い、麻生太郎財務相も「(政府)目標を直ちに作り替える必要はない」との認識だ。

 本当に大丈夫なのか。これまでの安倍晋三政権の歩みを振り返れば、その言葉を額面通りに信じるわけにはいかない。

 「経済再生なくして財政健全化なし」を基本方針に掲げる安倍政権は元来、財政再建に消極的だ。消費税増税も2度先送りした。国と地方のPB黒字化も当初は20年度を目標にしていたが、達成困難になると、あっさり5年先送りしてしまった。

 今回の試算では、国と地方のPB黒字化は29年度にずれ込むものの、歳出改革で3年程度の前倒しは可能という。ただこれは、実質2%程度、名目3%程度という政府目標を上回る高い経済成長が前提であり、絵に描いた餅にすぎない。

 経済成長率が20年度はマイナス4・5%に沈み、21年度はプラス3・4%に回復するとした見通しも民間より楽観的だ。

 20年度はコロナ禍対策で2度の大型補正予算を組み、新規国債発行額は90兆円に膨らんだ。税収不足で一段の財政悪化が避けられない見通しなのに、21年度予算の各省庁の概算要求には上限を設けず、期限も9月末と例年より延ばした。査定の時間は限られ、歳出膨張の抑制に本気とはとても思えない。

 コロナ禍に対応した医療検査の充実、雇用や暮らしを守る支出をためらうべきではないが、同時に、本当に必要な施策なのか厳しい吟味も求められる。

 財政再建を今出すと景気回復の障害になるとの考えもあろうが、借金頼みの大盤振る舞いはいつまでも続けられない。緊急事態を隠れみのに急激な財政悪化を見て見ぬふりするのは、将来世代への責任放棄となる。

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