故郷の空、恋しがる入院女性 連載・霹靂の日々【39】大島一樹

西日本新聞 くらし面

 以前に書いた通り、オクサンの病室は4人部屋。入院が長くなると、さまざまな方と同室になります。

 宮崎が故郷だというおばあさんがいらっしゃいました。娘さんが別の病院に勤めていて、自身ははるばるこちらに入院されたとのこと。病状については聞きませんでしたが、認知症ではない様子で、いろんなことを話しました。

 口癖もたくさん持っていて、とても親しみやすいお人柄。私がオクサンに会いに行くと毎回「よかね~」と言われ、たまに「私もハヨお迎えに来てほしか」とも。お連れ合いは亡くなられているとのことでした。「宮崎の空はもーっと青かった」。これも口癖で、遠くなった故郷がとても恋しそうな様子。

 ある時、看護師に「ご飯、食べとうなか」と言われていました。看護師は「じゃあオニギリにしてみようか」と応じていましたが、食事も含め、あまり代わり映えしない毎日。おばあさんのやるせなさそうな態度に、ただワガママを言っているだけじゃないんだな、と感じたものです。

 慢性期病院の療養病棟は決して回復を目指すところではない、という現実があらためて深く胸に刺さりました。中には病状が持ち直して介護病棟に移る方もおられますが、「終末が迫る方に何が必要なのだろう」とも考えました。

 ゆっくりとした時の流れは、人によっては辛いことになるのかもしれません。 (音楽プロデューサー、佐賀県みやき町)

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