台湾の恩人見つかる 落としたスマホが結んだ「優しさ」の縁

西日本新聞 夕刊 黒田 加那

 台湾旅行中になくしたスマートフォン捜しを手伝ってくれた「ユンさん」に会いたい-。本紙が6月に報じた東京の大学生の訴えは海を越え、台湾でも報じられるなど大きな反響を呼んだ。その思いが通じたのか、「あなたの特命取材班」に依頼主から朗報が届いた。「ユンさんと連絡が取れました」。縁を取り結んだのは、ちょっとした偶然と人々の温かい気持ちだった。

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 東京都の大学生、宮木快さん(22)がスマホをなくしたのは昨春、台湾の高雄国際空港方面に向かう電車内。旅の写真が保存されていたこともあって諦められず、台湾人の登録が多いという言語学習アプリ「ハロートーク」で帰国後に助けを求めた。すると「ユンさん」という台湾人女性が捜し出し、その友人の女性が日本へ持ち帰ってくれた。

 その後、十分なお礼をできないまま、戻ってきたスマホは壊れてしまい、登録されていた友人らの情報を喪失。ユンさんとも連絡がつかなくなっていた。

 本紙が報じてから数週間後。LINE(ライン)を通じてユンさんから突然、連絡があったという。「私を捜しているみたいだけど、どうしたの?」

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 2人を再び結び付けたのは、やはりハロートークだった。

 記者は取材を始めてからこのアプリに登録し、ユンさんを捜している旨を投稿した。台湾高速鉄道会社に勤めているという台湾人男性が連絡をくれたのは6月中旬。投稿内容を台湾の大手紙「蘋果日報」の記者に伝えてくれるという。ちなみに蘋果日報は、香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で創業者が逮捕された香港紙の姉妹紙だ。

 後日、蘋果日報が運営するニュースサイトは「日本人の大学生が台湾での恩人を捜している」と本紙記事を紹介。台湾最大のニュースサイト「ETtoday」や、訪日台湾人向けメディア「日本必買.com」でも伝えられた。

 こうした記事をハロートークの担当者がたまたま目にした。この担当者からの連絡を受け、ユンさんは自分が捜されていることを知った。

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 ユンさんの「正体」は、台北市に住む会社員の女性(30)。10年ほど前から日本のドラマやバラエティー番組が大好きになり、日本語を勉強するようになったという。自身も電車で傘をなくした経験があり、宮木さんを「助けてあげたいと思った」。

 どうやって捜したのか。台湾鉄道のウェブサイトで公開される落とし物リストを毎日確認し、ようやくそれらしいスマホを発見した。本人確認にパスワードが必要だったため、宮木さんが電話で駅の職員に伝えられるよう、両者に事情を説明するなど橋渡し役を務めた。

 さらに、友人で福岡県に住む台湾人女性(29)が仕事で台湾に戻るのを知り、日本で郵送するようスマホを託したという。

 「届いたのが分かったときは本当に安心した」とユンさん。宮木さんについて「もう1年前のことなのに、ずっと覚えていてくれてありがたい。この機に近況も聞けた」と喜んだ。

 スマホを日本に運んだ福岡県在住の女性は「たいしたことではない」という意味の台湾のことわざを出し、「ささやかな助け合いの温かさを広げられて良かった」。2人とも、恥ずかしいので名前は明かしてほしくないという。

 1年ぶりに感謝の気持ちを伝えることができた宮木さんは「台湾や日本で多くの人が協力してくれたおかげ。優しい人たちに『ありがとう』と言いたい」と笑顔を見せた。

 「今は難しいかもしれないけど、いつか3人そろって会えたら面白い」(福岡県在住の女性)。コロナ禍が収束したとき、落とし物をきっかけに縁が生まれた3人が会えることを願っている。(黒田加那)

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