多発する「内水氾濫」…治水対策の進捗状況は 佐賀、記録的大雨から1年

西日本新聞 一面 北島 剛 鶴 善行

 昨年8月に佐賀県など九州北部を襲った記録的大雨から28日で1年。県内では3人が死亡し、6千棟以上の建物に被害が出た。今も37世帯が公営住宅やみなし仮設住宅で暮らすが、大町町の佐賀鉄工所から油が流出した地域では営農を再開した。

 県によると、県内では建物被害は全壊87棟、大規模半壊107棟、半壊759棟、床上浸水773棟など6060棟に上る。被害額は農林水産関係約145億円、商工関係約130億円、公共土木施設約52億円。

 広範囲で浸水被害が出た六角川水系では、排水機場の整備や川底の掘削などを行う緊急治水対策プロジェクトが進んでいる。

「ハザードマップ」作成急げ

 昨年8月の九州北部の記録的大雨では、水路や下水道の排水が追い付かず、あふれた水が広範囲に地表を覆う「内水氾濫」が起きた。同様の被害は2018年7月の西日本豪雨でも福岡県の筑後平野で発生するなど近年顕著になっており、国土交通省は「内水」に特化したハザードマップの作成を自治体に促すなど対応を急いでいる。

 「想定をはるかに超えていた」。佐賀県大町町の鉄工所の担当者が説明する。工場が水に漬かり、流れ出た5万リットル超の油が周辺一帯の田畑にダメージを与えた。当時の1時間雨量は、気象庁が「恐怖を感ずる」「圧迫感がある」と表現する100ミリ超。佐賀市の観測点では史上最多の110ミリを記録していた。

 内水氾濫が発生するメカニズムは「雨量」と「受け皿」の相関関係で説明される。

 雨を受け止める田畑や山林が広ければ、多くが土に吸収されるため、急速に大量の雨水が地表にあふれることはない。だが吸収できる「容量」が十分でない場合、水路や下水道の排水能力を上回る量が流れ込み、冠水する、というわけだ。

 近年は「数十年に一度」の大雨の頻度が高まる一方、宅地開発の進展などで受け皿が減った結果、両者のバランスが崩れて内水氾濫が増加している、と専門家は指摘する。受け皿の補助として排水ポンプも置かれているが、それでも間に合っていない。

 データからも明らかだ。気象庁によると、全国で1時間雨量50ミリ以上を記録した回数は、1976~85年の年平均226回に対し、2010~19年は同327回に増加。国交省の土地白書によると、1975年に全国で557万ヘクタールあった農地は、2018年には442万ヘクタールに減少している。九州大工学研究院の島谷幸宏教授(河川工学)は、道路や宅地を造る際には緑地帯を設けるなど「街全体に貯水機能を持たせるような都市計画が必要だ」と言う。

 国も内水氾濫の危険性を認め、06年には「内水ハザードマップ」を作成するための手引を公表。昨年10月には、西日本豪雨と翌年の台風19号で甚大な浸水被害が発生したとして、マップの早期作成を促す通知を全国の自治体に出した。

 国交省によると、17年まで10年間での大雨による全国の浸水家屋は約32万棟。このうち7割の約22万棟が、内水氾濫による被害という。

(北島剛、鶴善行)

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