続く豪雨災害 「流域治水」への転換急げ

西日本新聞 オピニオン面

 もはや国内で豪雨災害を免れる地域はない-。そんな危機意識を持ち、河川の洪水対策に取り組む必要があろう。ダムや堤防といった施設頼みでは限界がある。視野を流域全体に広げ、それぞれの地域で官民が協力して人命を守っていきたい。

 「数十年に一度」とされる記録的な大雨が毎年のように日本列島を襲うことは今や、私たちの常識になった。この3年間でも、西日本豪雨台風19号に続き、今年7月には九州、中部、東北地方を豪雨が襲った。

 歴史をひもとくと、1959年9月の伊勢湾台風が河川の堤防決壊や高潮をもたらし、風水害としては戦後最悪の死者・行方不明者5千人余を出した。

 その教訓から2年後に制定されたのが、災害対策基本法である。統一性を欠いていた既存の災害関連法を取りまとめ、行政や住民の役割や責務を定めた。前後して高度成長期に入り、公共事業の増大によってダムなど洪水対策施設の整備が進み、一定の効果を上げてきた。

 それでも平成(89~2019年)になると、災害をもたらす大雨と台風は100件を超し、年平均3件以上だ。大雨も台風もエネルギー源は高い海面水温で発生する水蒸気である。地球温暖化が要因とみられ、防災体制の強化を気候変動の速さが上回っていると解釈できる。

 これに対応し、河川の氾濫を点や線としての地域ではなく、面としての流域全体で制御する重要性が強調されるようになってきた。今年7月に国土交通相の諮問機関が洪水対策の柱として答申に盛り込んだのが「流域治水」という考え方だ。

 河川管理者の国や都道府県に加え市町村や住民、企業が一体となり、流域全体の治水へ転換することが求められている。

 ダムや堤防の整備に加え、一時的に雨水をためる自然池、水田の利用が有効だ。福岡県柳川市中心部で張り巡らされた掘割や、佐賀県の白石平野に広がるクリークは、事前放流で貯水容量を増やすことで洪水調節に役立っている。福岡市など都心部はアスファルトやコンクリートに覆われ雨水が浸透する地面が狭く、水路経由で貯水する施設の建設を着実に進めたい。

 ソフト面の対策も重要だ。市町村の防災計画の絶え間ない見直しや、不動産取引時の水害リスクの情報提供、危険地域での住宅新築制限などである。人工知能(AI)の進化など気象予測技術の発展にも期待したい。

 7月豪雨を受け熊本県では、建設中止となった川辺川ダム計画の必要性を巡る論議が再燃している。ダムも流域治水の一部であるという視点を忘れてはならない。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ