垂直避難できず 電動車椅子の男性「もしものときは…」 支援に課題

西日本新聞 くらし面 梅本 邦明

 昨年8月、佐賀県を中心に大きな被害をもたらした記録的大雨から1年。現場では障害者など災害弱者の避難支援の課題があらためて浮き彫りになった。各市町村は「避難行動要支援者名簿」を作成し個別の支援計画を作成することが求められるが、進んでいない。佐賀市の自宅が浸水して避難した車椅子生活の男性の体験から現状を探った。

 佐賀市末広の北古賀雄三さん(36)は先天性の脳性まひのため電動車椅子を利用している。昨年8月28日、未明から早朝にかけ九州北部を猛烈な雨が襲った。北古賀さんの自宅周辺は道路が冠水し、敷地内の倉庫も浸水。避難しようにも既に福祉車両のマイカーは使えない状態だった。

 「どこに連絡すればいいのか」。妻と2人で動転する中、警察署に連絡して救助を求めたが、水かさは増す一方。床上まで浸水して電動車椅子が水に漬かれば身動きできなくなる。

 そこへ地元の民生委員の女性が駆けつけた。だが自宅2階に垂直避難しようにも、北古賀さんは体重約70キロ、電動車椅子は重さ約100キロ。妻と民生委員の力では到底抱えきれない。

 幸い、警察官が到着した頃には水が引き始めた。夫婦はまだ小雨が降る中、約1・5キロ離れた公民館に車椅子で約30分かけて避難し、一夜を過ごした。

 「民生委員の見守りはありがたいが、ご自身が高齢な場合が多く力作業などの対応には限界がある。今回は助かったが、もしものときは覚悟するしかない」

   *    *

 佐賀市の要支援者名簿の登録者は1万2304人(今年2月時点)。うち民生委員や地域の自主防災組織、社会福祉協議会など避難の支援関係者への情報提供に同意したのは3494人。さらに個別支援計画書を作成したのは2860人にとどまる。昨年8月の水害後、市は要支援者名簿や個別支援計画が実際の避難でどの程度機能したのか調査していない。

 北古賀さんは名簿には登録されていたが、個別支援計画については「制度そのものを最近まで知らなかった」という。避難ルートの確保や必要な介助者数など「障害の種類や程度により支援は異なる。特性に応じた支援をお願いしたい」。近く市に個別計画について説明を求めるつもりだ。

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