安倍首相の退陣表明、各国も驚き 米中韓、後任選びを注視 

西日本新聞 総合面 田中 伸幸 坂本 信博 池田 郷

「重要性変わらない」米国

 【ワシントン田中伸幸】国際協調路線に懐疑的で孤立主義的な政策を進めてきたトランプ米大統領にとって、辞任を表明した安倍晋三首相は緊密な信頼関係を構築してきた数少ない首脳だっただけに、米政府は驚きを持って受け止めるとみられる。米主要メディアも「日本で歴代最長のリーダーである安倍首相が病気で辞意」(ニューヨーク・タイムズ紙)などと速報し、関心の高さを示した。

 安倍首相はトランプ氏が大統領選に勝利した直後の2016年11月に渡米し、就任前にもかかわらず初会談。就任後も直接会談や電話会談を重ね、プライベートでは共通の趣味であるゴルフを楽しむなどして親しい関係を築いた。北朝鮮の核・ミサイル問題では「トランプ氏が安倍氏の助言に耳を傾けることもあった」(日米外交筋)とされる。

 ただ現時点で日米関係に関する緊急課題や、トランプ氏が安倍首相に意見を求めるような事案は乏しく「米政府の日本に対する関心は低い。首相が代わっても日本にとって米国の重要性は変わらない」(政府関係者)。

 加えて、トランプ氏は27日(日本時間28日)に共和党大統領候補の指名受諾演説を終えたばかり。11月3日の大統領選挙で再選が危ぶまれていることもあり「自身の選挙のことで頭がいっぱいだろう」(同)との見方が広がる。

「論評は控えたい」中国

 【北京・坂本信博】中国の習近平指導部は安倍晋三首相の辞任表明を受け、後任となる政治家の対中観を注視している。ここ数年は改善傾向にある対日関係を重視する姿勢を示していたためだ。

 中国では28日午後、共産党機関紙の人民日報電子版や国営中央テレビなどが、日本の報道を転電する形で安倍首相の辞意を相次いで速報。中国外務省の趙立堅副報道局長は定例記者会見で「日本の内政問題のため論評は控えたい」とした上で「中日両国は近隣同士。日本側と一緒に引き続き関係を推進し、絶えず改善し発展させたい」と述べた。

 第1次政権で安倍首相は、小泉純一郎元首相の靖国神社参拝などで関係が悪化していた中国を初の外遊先に選び、両国関係が融和に傾いた。第2次政権では、民主党政権による沖縄県・尖閣諸島の国有化や、自身の靖国参拝で関係は戦後最悪レベルに冷え込んだが、関係改善に向けて積極的な姿勢を示してきた。

 中国政府は、日本の同盟国である米国との対立が先鋭化する中、東シナ海沿岸の福建、浙江両省の地元当局が漁民に尖閣への接近禁止を指示するなど、日本との過度な摩擦を避ける意向を示している。安倍首相も習近平国家主席の国賓としての来日実現を目指してきたが、新型コロナウイルス禍で宙に浮いた状況。後任首相の対中観によっては、中国政府は外交戦略の見直しを迫られる。

「関係改善の機会に」韓国

 【ソウル池田郷】韓国メディアは28日、安倍晋三首相の辞意表明を速報などで相次いで伝えた。革新系の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、保守色の強い安倍政権とは折り合いが悪い。韓国内では新首相の就任をきっかけに関係改善への期待が高まるが、元徴用工訴訟問題などを巡って両政府の主張の溝は深い。

 「靖国神社参拝で国際社会に波紋を呼び、徴用工問題を巡る韓国の判決に反発するなど歴史問題で強硬な態度を見せた」(聯合ニュース)。安倍氏の辞意を伝えた韓国メディアの報道は厳しい内容が目立った。

 安倍氏も当初は元慰安婦問題を巡って2015年12月に日韓合意を結ぶなど関係改善を探った。しかし韓国最高裁が18年10月、日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟判決後、関係は急速に悪化。日本が昨夏に対韓輸出管理を強化すると、韓国内の反発は最高潮に達した。韓国の日韓関係研究者は「安倍氏を悪役に仕立てて国民の反日感情をあおり、政権の追い風にしようとした側面もある」と見る。

 北朝鮮問題でも、融和姿勢の文氏と圧力重視の安倍氏は立場が異なる。文政権は残り2年を切った任期中に南北関係の進展に全力を挙げる構え。米国の後ろ盾を得るため日本の支持も欲しており、韓国紙の東京特派員経験者は「首相交代は関係改善の機会になり得る」と話す。

 大統領府報道官は28日、「新内閣とも日韓間の友好協力関係増進のため引き続き協力していく」との談話を発表。ただし主要な問題で日本政府が立場を変える余地は乏しく、日本外交筋は「韓国側の期待感は過剰という印象がある」と困惑気味だ。

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