鎮魂の思い陶芸に 大韓航空機撃墜で長男夫妻犠牲 岡井さん死去84歳

 1983年にロシア・サハリン沖で起きた大韓航空機撃墜事件の遺族で陶芸家の岡井仁子(ひとこ)さんが29日、急性呼吸不全のため84歳で亡くなった。米ソ冷戦下で起きた事件の詳細は、長い間明らかにされなかった。長男真さん=当時(22)=と妻葉子さん=同(25)=を失った岡井さんは、民間人として可能な限りの真相究明活動を行い、旧ソ連崩壊後は、サハリンとの文化交流などで鎮魂と平和への願いを発信し続けた。

 いつも笑顔で人と接していた岡井さんは柔和な印象とは異なり、信念の人だった。岡井さんの歩みを2013年10~11月の本紙聞き書きシリーズ「終わりなき旅」(24回)で紹介した。

 戦闘機による民間航空機撃墜を旧ソ連は当初、ひた隠しにした。岡井さんは、悲しむだけでなくサハリンでの住民への聞き取りに通い1991年4月に当時のゴルバチョフ大統領が長崎市を訪問すると、歓迎の列に加わり真相解明を直訴するなど精力的に行動した。

 陶芸に打ち込み、作品で母親の心情を表現した。球体の中央に亀裂を入れて悲劇を象徴させた「海ざくろ」などの作品に犠牲者への鎮魂を込めた。縄文土器が日本からサハリンに伝わったという説を踏まえ、野外で制作する「野焼き」も取り入れ、国境を超えた人々が共に取り組むことで平和に暮らした時代を思う交流につなげた。

 2013年3月、脳内出血で倒れ、右半身にまひが残った。だが、リハビリに取り組み、15年8月にはサハリンを訪問。文化交流と慰霊を果たした。「最後の訪問」と語っていたが、その後も事件現場の海に「海ざくろ」をささげるために再訪する計画を温めるなど意欲は衰えなかった。昨年3月、再び脳内出血に倒れ、当時住んでいた宮崎県から福岡市に移り、闘病中だった。

 葬儀・告別式は真さんが亡くなった9月1日、近親者だけで行う。探し続けた真さん夫妻に天国で再会し、積もる話をしていただきたい。 (木下悟)

 大韓航空機撃墜事件 1983年9月1日未明、ニューヨーク発アンカレジ経由ソウル行き大韓航空007便が、予定の航路を大きく逸脱。当時のソ連領空を侵犯し、ソ連軍機のミサイルにより、サハリン・モネロン島沖で撃墜された。乗客乗員269人全員が死亡。うち日本人は28人。国際民間航空機関は93年、(1)大韓機乗務員の自動操縦装置の操作ミス(2)旧ソ連軍機が民間機を確認する努力をしなかった-ことなどが原因とする最終報告を発表した。

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