男性は決まって午前5時に目が覚める。弁当を作り、朝の光を浴びて…

西日本新聞 社会面 古川 努

 男性は決まって午前5時に目が覚める。弁当を作り、朝の光を浴びて仕事場に向かう。わなにかかったシカやイノシシを解体し、精肉する。「ジビエとかいってね。稼ぎもまあまあ」。75歳。日に焼けた顔が年齢を感じさせない。

 7月4日の豪雨で熊本県球磨村の自宅は流され、命からがら生き延びた。避難所暮らしでも「目が覚める時刻は同じ」。四方をカーテンで囲まれた段ボールベッドに、朝の光は届かない。「寝っ転がって、じっとしとる」

 災害時、避難所は大事な取材現場となる。明るく振る舞う被災者も、1人になると違う顔になる。だが、切実な訴えに耳を澄ます場は今、コロナ禍で立ち入れない。

 ならば集落へ。顔を合わせたのは4回目か、5回目か。毎回、気丈に冗談めかして話す男性が自宅跡を見つめ、つぶやいた。「生きとるんは、死ぬよりきつい」。続く言葉を聞くために、また通うしかない。 (古川努)

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