ついに来た「ぼっち」の時代

西日本新聞 永田 健

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は経済の落ち込みを避けようと「Go To トラベル」などを実施し、消費に励むよう国民に求めている。その一方で感染防止のため「集まるな、騒ぐな」と呼び掛けるのにも懸命だ。

 こうした折、私が注目しているのが「ぼっち」的行動だ。「ぼっち」とは「ひとりぼっち」のこと。集団を嫌い単独行動をする人を指す言葉である。例えば一人で食事することは「ぼっち飯」といった具合だ。

 「ぼっち」には「友達がいない寂しい人」のイメージがあるので「ソロ活動」と呼ぶこともある。ソーシャルディスタンスが求められる今、群れない「ぼっち」「ソロ」の行動パターンをもっと前向きに捉え直していいのではないか。

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 「ソロキャンプ」がブームを呼んでいる。一人でするキャンプのことだ。お笑い芸人のヒロシさんがユーチューブで実践動画を披露したことで「こんなキャンプもあったのか」と話題になり、愛好者が広がった。

 8月に出版された「ヒロシのソロキャンプ」(学研プラス)はすでに3刷が決定した。予想を超える売れ行きに、同社編集部は「コロナの影響を感じる。世間の皆さんがソロキャンプにより注目したのだろう」と分析している。

 ヒロシさんはこの本の後書きで「これまでの僕の人生は『みんなで』という言葉に振り回されてきた」と告白し「ソロキャンプで自然体の自分を取り戻した」と語っている。読者からはこの後書きへの共感の声も寄せられているという。

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 私が「ぼっち」行動の盛り上がりに気付いたのは最近になってだが、ソロ活動研究の第一人者で「超ソロ社会 『独身大国・日本』の衝撃」(PHP新書)などの著書もある博報堂ソロもんラボ・リーダー、荒川和久さんは「すでに日本ではソロ生活者たちが消費を牽引(けんいん)するようになっている」と指摘している。それに応じ「例えば家族利用のイメージが強いファミレスなども、一人客重視にシフトしている」という。

 荒川さんによると、コロナ下でも独身者の生活パターンにほとんど変化はないらしい。普段の生活が自然に「3密回避」に適合していたからだろう。

 荒川さんが気にしているのはむしろこんなケースだ。「家族を持っている人が在宅勤務になり、一人になれる時間を持てなくなったことがストレスになっているのでは。コロナ下で、一人の時間の大切さに気が付き始めるのではないか」

 荒川さんの持論は「社会の一人一人が『ソロで生きる力』を身につけることが、新しい未来のしなやかなコミュニティーの創造につながる」である。

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 私は友人が少なく、後輩からも全く慕われていないので「飲みに行こう」「カラオケに行きましょう」などと誘われることはまずない。家庭以外の行動パターンは「ぼっち」であり、特に困りもしなかった。ただ、群れて騒がなくても楽しめる「ぼっち」「ソロ」がポジティブに評価される時代が来たのだとすれば、それは少々うれしい。

 学校や職場で「ぼっち」にしている皆さん。ご一緒にどうぞ。「ついに俺の、私の時代が来たぜ!」

 (特別論説委員・永田健)

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