「くまもと復旧・復興有識者会議」蒲島知事、民意把握の道筋示さず

西日本新聞 熊本版 古川 努

 熊本県は30日、7月の豪雨災害からの復旧・復興のベースとなる考え方や方向性を議論する「くまもと復旧・復興有識者会議」(座長・五百旗頭(いおきべ)真兵庫県立大理事長)を開いた。建設が中止された川辺川ダムの是非論が再燃する中、蒲島郁夫知事は、政策決定に必要な「科学的根拠」は国や県、流域12市町村で構成する豪雨検証委員会で示されるとの考えを示す一方、合意形成の道筋については明言を避けた。

 有識者会議では、テレビ会議方式を含め委員7人が参加。災害の様相の分析や治水へのアドバイス、政策決定の考え方について意見を述べた。川辺川ダムの是非に関する具体論はなかった。県が11月をめどに策定する「復旧・復興プラン」に反映させる。

 議論のベースとして金本良嗣・電力広域的運営推進機関理事長は「ダムがあれば水害はまったく起こらないかというと、そうとは限らない。不確実性を踏まえて」と強調。谷口将紀・東京大大学院法学政治学研究科教授は「人吉球磨地域は非常に良く(水害に)備えておられたが、この備え以上のプラスアルファを議論すべきだ」と訴えた。

 被災地を視察した上で、河田恵昭・関西大社会安全研究センター長は「人吉市街地は盆地の傾斜地。(越流した水が)川のように流れた。通常の浸水とは違う」と指摘。古城佳子・青山学院大教授は「2階以上の高さの逃げる場所が現地にない。人命を考えると議論する必要がある」と問題提起した。

 坂東眞理子・昭和女子大総長は「民意はSDGs(持続可能な開発目標)に向かっている。この地球を持続できるような環境にするための『グリーン・ニューディール』を球磨川流域から発信していただきたい」と提案。蒲島氏は「きょうの議論で方向性が明確になった」と述べた。

 一方、今後の政策決定の過程について蒲島氏は「政治は、民意に誠実に沿って忠実にやる部分と、民意を超えるリーダーシップが必要。民意を超えるリーダーシップを発揮するには科学的根拠が必要」と発言。科学的根拠については「今の検証委員会がこれに一番近い」と述べた。

 だが「民意」の捉え方について問われると「各市町村長の意見が民意を代表しているという考え方もある」「民意の変化をしっかり捉えるには時系列で見なければならない」と二つの「考え方」を示した上で「(ダム建設の白紙撤回を表明した)2008年の民意と、今(の民意)は絶対違うと思う。さまざまなことを考えて決めていきたい」と述べるにとどめた。 (古川努)

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